□設立趣意書

 出生率の低下及び平均寿命の伸長は、近い将来深刻な少子・高齢社会を出現させることが予想される。このようななかで、次の時代を担う子供達が数多く健康に出生、成育することは、国力向上に繋がる極めて重要な国民的課題である。

 この課題解決のためには、子供を安心して生み育てることができる社会的環境の整備、晩婚化対策及び新生児治療水準の向上等の諸施策を推進するとともに、女性の健康の保持・増進を図ることが基本的な対策として重要であると考えられる。

 こうした状況のなかで、医療、特に産科及び婦人科医療の分野では取り組むべき課題が山積している。

 まず、周産期を中心とするリプロダクティヴ・エイジにおける種々の問題の存在が挙げられる。すなわち、先進諸国に比し妊産婦死亡率が高率であること、妊娠中毒症、子宮内膜症、常位胎盤早期剥離等の病因が未だ解明されていないこと、不育症、妊婦の感染症、子宮外妊娠及び多胎妊娠等の発生率が増加していることなどである。これらの課題を解決し、女性のリプロダクティヴ・エイジにおける健康を万全にすることは、医療面からの少子化対策として極めて重要であると考えられる。そのためには、リプロダクティヴ・エイジにおいて女性に発現する疾患の病態、病因、治療法等の研究を振興し、これら疾患の予防・診断・治療の水準向上を図ることが必要である。

 次に、リプロダクティヴ・エイジにおける異常、ストレスと後年罹患する疾患との関連に関する問題の存在が挙げられる。例えば、妊娠中毒症を早期に発症した女性は後年極めて高い確率で高血圧症に罹患し、また、経産回数の多い女性は後年腹圧性尿失禁を発症しやすいことなどが知られているが、その関連の詳細については未だ解明されていない。そこで、リプロダクティヴ・エイジにおけるこのような異常、ストレスとその後発現する疾患との関連に関する研究を振興し、後年の疾患発症の予防に結びつけることは、女性の健康の保持・増進に多大な貢献をなすと考えられる。

 更に、加齢と女性に発現する疾患との関連についても一層の研究が求められている。例えば、閉経により女性はその後に骨粗鬆症や高脂血症等を好発するなど、加齢は女性の一生に多大な影響を及ぼしている。今後、急速な高齢社会の進展にともない加齢によるこれら疾患が確実に増加することが予想されており、疾病発症の予防、適切な治療の実施とともに、長期化する女性の高・老年期のクオリティー・オブ・ライフを向上させることが切望されている。そのためには、加齢と女性に発現する疾患との関連に関する研究の振興を図ることが必要である。

 このように、医学の振興を通じ、産科及び婦人科医療を中心にその発展を図ることは、女性の健康の保持・増進に寄与し、ひいては少子化、高齢化に対し医療面から貢献することとなり大きな意義を有する。

 こうした現状に鑑み、この度、キッセイ薬品工業株式会社会長神澤邦雄は、その私財(現金3億2400万円、キッセイ薬品工業株式会社株式30万株)を提供することを申し出、またキッセイ薬品工業株式会社からは創業50周年を記念し、収益の一部を社会へ還元して、医学の研究振興に役立てるべく現金1億円を提供する申し出があった。

 よって、ここに、周産期を中心とするリプロダクティブ・エイジ及び高・老年期の女性に発現する各種疾患に関する成因、予防、診断、治療等の多角的な研究の奨励等を行うことにより、医療・医学の発展を図り、もって国民の健康と福祉の向上に寄与することを目的として、財団法人神澤医学研究振興財団を設立するものである。

当財団での事業が研究助成を通じて医学振興の一助となれば幸いである。

 
          平成8年9月25日
            設立発起人
              坂元正一
              髙久史麿
              小川秋實
              神澤邦雄
              神澤陸雄