アルツハイマー病に関係するテストステロンの生体内利用率の低下
2004-01-26 16:00:18-0400(ロイターヘルス)発
ニューヨーク(ロイターヘルス)―最近の試験の所見から、晩年にアルツハイマー病(AD)を発症する男性の遊離テストステロンが低値であることが示唆されている。
さらに、別の試験によって、遊離テストステロン値の低下が男性女性とも、主に高値の性ホルモン結合グロブリンによってメディエートされている可能性のあることがわかった。両試験は、issue of Neurologyの1月27日号に掲載されている。
これ以外の試験では、ADの男性のテストステロン濃度が非痴呆被験者よりも低値であったことが報告されている。ボルチモアの国立老化研究所のSusan M.Resnick博士らによれば、このような試験だけでは、テストステロンが低値であることがADの原因であるかまたは結果であるかを判断することはできないと言う。
そこで、Resnick博士らのグループでは、本来は前立腺に関する健康と疾患の原因を検討するためにデザインされた試験であったボルチモア市での老化の縦断的試験から、前向きに収集したデータを検討した。ベースライン時には、32〜87歳の男性574例は非ADであった。平均19.1年のフォローアップ後、このうち54例がADの診断を受けた。
博士らの報告によれば、総テストステロンおよび性ホルモン結合グロブリン(SHBG)の血中濃度とADとの間には有意な相関はなかった。しかし、性ホルモン結合グロブリンを用いて血清テストステロンを分離することにより算定された遊離男性化ホルモン指数(FAI)は、ADの発症と反比例の関係にあった。
多重交絡因子を調整したのち、ADのリスクはFAIが10ユニット増大するごとに26%減少し、テストステロンにADの発症を予防する効果があることが示唆された。
さらに詳細な分析から、「我々が試験に用いたのは、ADの診断を受ける少なくとも10年前に得られた値のみであったが、それでも著明な効果が認められた」として、Resnick博士は、ロイターヘルスにテストステロン値の低下がADの結果ではないという仮説の根拠を語った。
また、博士は、このような所見から、「遊離テストステロン高値を維持している男性は、ADのリスクが低い」と付け加えた。
2件目の報告では、イタリア、Cagliari大学のGian
Benedetto Melis博士らが、ADの診断を受けた男性32例および女性64例と非ADの男性32例および女性72例のホルモン値を比較している。被験者のBMIは20〜22の範囲であった。
ADの被験者は男女ともに、SHBG値が有意に高く、FAIが有意に低かった。「AD患者には、SHBGが高値であることが主因となり、テストステロンの生体内利用率が低下する傾向が認められる」と、記載している。
Resnick博士は、このような結果の説明として、非結合性テストステロンが脳血管関門を通過し、そこで「アンドロゲンとして作用するかまたはエストロゲンに変換される」可能性があると指摘しており、このことは中枢神経系に対するエストロゲンの薬効を示す従来の試験によって裏づけられている。
「このような所見が将来の研究を促進することを願う。しかし、我々はテストステロン補充による効果は、ADに対する予防または記憶力の改善という点で保障できるものであるとは考えていない」と、Resnick博士は言う。
実際、米国国立保健研究所(NIH)は、医薬品専門家委員会に対して、将来、男性のテストステロン補充療法の臨床試験を実施するように助言している。しかし、これについては、今のところ、「推奨されているのは、安全性を考慮し、テストステロン低値の男性群のみを対象とした小規模臨床試験である」と博士は言っている。
Neurology 2004;62:188-193,301-303.