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医薬品

2000年1月25日

シナプティック社との共同研究開発契約締結のお知らせ

 キッセイ薬品工業株式会社 (代表取締役社長 神澤陸雄) は1月24日、米国のバイオベンチャー企業、シナプティック社 (Synaptic Pharmaceutical Corporation、ニュージャージー州) と、新しいGタンパク質共役型受容体遺伝子の発見とその受容体の機能を解析するための共同研究を実施する契約を締結致しました。
 本契約により、新しい作用機作や作用点を持つ新薬を創製するための作用の標的となる新規受容体について共同で探索研究を実施します。また当社は共同研究から得られる成果を全世界で企業化する権利を取得しました。

 従来、画期的新薬のほとんどは各種受容体、イオンチャンネルまたは生体内酵素に作用する物質でした。今後も受容体に作用する物質から重要で画期的な医薬品が生まれることには変わりがないと考えられています。
 Gタンパク質共役型受容体は、細胞膜上に存在する受容体であり、これに種々の神経伝達物質やペプチドホルモン、または未解明の生体内物質等が特異的に結合すると、結合した物質からの情報を、受容体に共役しているGタンパク質を介して細胞内に伝達し、生理作用を発現するタイプの受容体です。本受容体の存在は多様であって臓器特異性もあることから、種々の生体内酵素とともに新薬の標的分子として最も注目されています。
 ヒトでは約1,000種類の本受容体が存在することがゲノム解析等から推定されています。しかしそのうち特異的に結合する物質や生理機能が判明しているものは約250種に過ぎず、残りの750種近くは結合物質や機能が未解明のままの状態です。従ってこれら未知の本受容体を解明し、その作動薬や拮抗薬を創製すれば新しい医薬品として開発できる可能性が非常に高いと言われています。

 このようにヒトゲノム解析情報に基づき、疾患関連遺伝子や薬剤反応性関連遺伝子を発見し、医薬品の標的となる受容体タンパク質や生理活性物質を探索し創薬に結び付ける「ゲノム創薬」は、従来の幅広い探索研究による創薬に比べターゲットの絞り込みの効率化、的確な治療効果、副作用の軽減、開発期間の短縮、コストの削減等多くのメリットをもたらすことが予想され、今後医薬品開発に不可欠の技術となると考えられます。
 ゲノム解析技術は現在欧米が技術的に大きく先行していますが、政府はミレニアムプロジェクトの一環として、痴呆等神経疾患、がん、糖尿病・高脂血症等代謝性疾患、高血圧等循環器疾患及び気管支喘息等免疫・アレルギー性疾患に関連する遺伝子を解明し、疾患の予防、治療法などの確立や画期的な新薬の開発などを目指す事業を強力に推進するとしています。

 今回のシナプティック社との提携の主要目的は、新規遺伝子の探索により新薬の標的となる新規受容体を見出し、その機能を解析することです。これにより、新薬創製の初期ステージの重要な標的探索研究の効率化が図られ、当社の創製品研究開発力が更に強化されることが期待されます。
 
 当社社長神澤陸雄は「創製品研究開発型企業としての基盤を確立するためにも、今回の提携を機としてゲノム創薬にも本格的に参入していきたい。ゲノム解析を利用した新薬開発を目指すには、既に米国で具体的な実績をもち、技術レベルの高いシナプティック社との共同研究が最適であると判断した。この共同研究を通じて、欧米に通用する人材及び技術を育成したいと考えている。今回の提携は、既に始まりつつあるポストゲノムの時代に即応するためでもある」と述べています。

 当社は経営ビジョンとして「世界の人びとの健康に貢献できる独創的な医薬品を開発し提供する」を掲げており、21世紀に向けて研究開発力の一層の強化を図るため、1.創製品研究開発力の強化、2.海外ベンチャー企業との提携の積極化、ならびに3.医薬品開発テーマ導入の強化を進めています。
 その一環となる欧米ベンチャー企業との提携としては今回の他に、ヴァーテックス社 (米国マサチューセッツ州) とp38MAPキナーゼ阻害剤 (炎症性疾患治療剤) の共同研究開発を進めているほか、インスパイア社 (米国ノースカロライナ州) とP2Y2受容体作動薬 (去痰剤) の共同研究開発を進めております。このうちヴァーテックス社との共同研究開発では、タンパク質の3次元構造を解明し、その活性部位に作用する化合物をコンピュータを利用して探索する技術、ならびに化合物の最適化を図るコンビナトリアルケミストリーの技術等についても技術提携を実施しています。

 当社は今後もゲノム創薬をはじめ様々な最新技術を利用し、独創的な医薬品の研究開発を一層強力に押し進めて行く予定です。


<シナプティック社の概要>

■会社名
Synaptic Pharmaceutical Corporation (NASDAQ上場)

■設立
1987年

■代表者
キャスリーン・P・マリニックス博士(Dr. Kathleen P. Mullinix)
(Chairman, President and CEO) (元コロンビア大学副学長)

■所在地
215 College Road, Paramus, New Jersey 07652-1431

■従業員
127名

 シナプティック社は、ゲノム学、バイオ情報科学及び遺伝子機能解析技術などを駆使することによって、新薬創出のために有効な標的受容体を探索研究する専門技術を有するバイオテクノロジー企業です。特に探索研究の対象をGタンパク質共役型受容体に特化した戦略を取っており、その新規遺伝子の探索研究は、独自の技術と理論に基づいて行われています。即ち、シナプティック社が作製する遺伝子ライブラリーは一般的な遺伝子ライブラリーに比べ、新規遺伝子・受容体を発見する確率が高くなるように工夫されており、又、その機能を効率良く解析できる評価系が構築されています。これらのシナプティック社の技術力は高く評価されており、これまでにメルク、イーライリリー、ノバルティス、ワーナーランバート等いくつかの欧米大手製薬企業が共同研究開発を実施しています。


以上

≪ご参考≫

Gタンパク質共役型受容体とは
 受容体とは、細胞に存在し、細胞外からの結合物質を認識し、その物質の情報に基づき細胞に応答を誘起する構造体で、その本体はタンパク質である。それぞれの受容体は、ある特定の結合物質を認識する。
 生体内の細胞膜上に存在する受容体は、イオンチャンネル型受容体、酵素活性内蔵型受容体、そしてGタンパク質共役型受容体の3種類に大別される。この中でGタンパク質共役型受容体は、構造的に関連したタンパク質のスーパーファミリーであって、細胞膜貫通部位が7ヵ所存在しαβγサブユニットからなるGタンパク質を介してその情報を細胞内に伝達しており、種類も最も多い。
 この受容体の刺激により活性化されたGタンパク質は、細胞膜の内側で酵素やイオンチャンネルと結合してその活性を制御するが、その結果、細胞内ではシグナル分子が生成または消失したり、細胞外あるいは細胞内小器官からイオンが流入したりする。細胞内で調節されたシグナル分子は結果的には何らかのプロテインキナーゼ(タンパク質リン酸化酵素)の活性化などを介して複雑で多様な生物学的機能を発現している。

 Gタンパク質共役型受容体にはアドレナリン、セロトニン、ヒスタミン、プロスタグランジン、アセチルコリンなどの低分子を結合物質とする多くの受容体ファミリーに加えて、アンジオテンシンⅡ、ガストリンなどのペプチドのような高分子を結合物質とするものも数多くある。そのうえ、分子生物学の技術を用いて多くのGタンパク質共役型受容体が同定されているが、その結合物質が未だ同定されていないオーファン受容体も多く存在する。

 今日市販されている医薬品の中には、Gタンパク質共役型受容体の作動薬や拮抗薬であるものが数多くある。たとえば、潰瘍に用いるH2拮抗薬、高血圧に用いるβ受容体拮抗薬、喘息のためのβ作動薬、片頭痛のためのセロトニン作動薬などである。Gタンパク質共役型受容体は現在でも新薬発見の宝庫であると期待され、本受容体の作動薬や拮抗薬を得るために世界中が精力を注いでいる。このようにGタンパク質共役型受容体が従来から医薬品開発の標的分子として多く取り上げられてきた理由としては、1.本受容体は細胞内の情報伝達に重要な役割を担っている事、2.本受容体に作用する薬剤の基本的な構造要素に関する知見が多い事、3.本受容体は種類が多く多様性に富んでおり未知のものも数多く存在していると考えられる事、等があげられる。

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