薬効薬理

サビーン
作用機序17)

アントラサイクリン系抗悪性腫瘍剤が挿入(インターカレート)されたDNAは、トポイソメラーゼⅡと結合し(DNA-トポイソメラーゼ複合体の形成)、DNAが切断された状態で安定化します。その結果、トポイソメラーゼⅡによるDNAの再結合が阻害されて細胞毒性を発現し組織障害を誘発するものと考えられています (図1)。
 デクスラゾキサンは、アントラサイクリン系抗悪性腫瘍剤の血管外漏出による組織障害に対し、トポイソメラーゼⅡの作用を阻害することにより組織障害抑制作用を示すとされ、主に以下の2つの作用機序が考えられています。

  • 1) デクスラゾキサンは、トポイソメラーゼⅡと結合することによりATP結合部位の立体構造の変化を介してDNAのトポイソメラーゼⅡへの結合(DNA-トポイソメラーゼ複合体の形成)を阻害する(図2、作用機序1)。
  • 2) デクスラゾキサンは、DNA-トポイソメラーゼ複合体に結合し、DNA切断前の状態で安定化させる。また、トポイソメラーゼⅡはタンパク質分解酵素により分解され減少する
    図2、作用機序2)。

図1・図2

承認時評価資料:作用機序

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非臨床試験

ダウノルビシン誘発皮膚潰瘍に対する単回投与での抑制作用(マウス)18)

方法:

雌B6D2F1マウスの背部にダウノルビシン(3mg/kg)を皮下投与し、その直後に生理食塩水又はデクスラゾキサン(62.5~250mg/kg)を腹腔内投与した。薬物投与後35日間、潰瘍発現の有無を観察し、潰瘍が認められた個体についてはその面積を経時的に測定して潰瘍面積AUCを算出した。

結果:

潰瘍発現率は、対照群(生理食塩水)では100%であるのに対し、デクスラゾキサン62.5mg/kg投与群では89%、デクスラゾキサン125mg/kg投与群では78%、デクスラゾキサン250mg/kg投与群では67%でした。また、潰瘍面積AUCは、全てのデクスラゾキサン投与群において、対照群と比較して有意に減少しました。

潰瘍発現率※1

潰瘍面積AUC※2

※1:潰瘍発現率は(観察期間に潰瘍が発現した例数)÷(全例数)×100により算出した。
※2:潰瘍面積AUCは潰瘍の発現が認められた個体の各日の潰瘍面積より算出した。

承認時評価資料:ダウノルビシン誘発皮膚潰瘍に対する単回投与の作用

ダウノルビシン誘発皮膚潰瘍に対する反復投与での抑制作用(マウス)19)

方法:

雌B6D2F1マウスの背部にダウノルビシン(3mg/kg)を皮下投与し、ダウノルビシン投与直後から1日1回3日間、デクスラゾキサン(250mg/kg)を腹腔内投与した。対照群には生理食塩水をダウノルビシン投与直後に1回のみ腹腔内投与した。薬物投与後35日間、潰瘍発現の有無を観察し、潰瘍が認められた個体についてはその面積を経時的に測定して潰瘍面積AUCを算出した。

結果:

潰瘍発現率は、対照群(生理食塩水)では100%であるのに対し、デクスラゾキサン250mg/kg投与群では75%でした。また、デクスラゾキサン250mg/kg投与群の潰瘍面積AUCは、対照群と比較して有意に減少しました。

潰瘍発現率※1

潰瘍面積AUC※2

※1:潰瘍発現率は(観察期間に潰瘍が発現した例数)÷(全例数)×100により算出した。
※2:潰瘍面積AUCは潰瘍の発現が認められた個体の各日の潰瘍面積より算出した。

承認時評価資料:ダウノルビシン誘発皮膚潰瘍に対する反復投与の作用

ダウノルビシン誘発皮膚潰瘍に対する抑制作用:投与タイミングの影響(マウス)20)

方法:

雌B6D2F1マウスの背部にダウノルビシン(3mg/kg)を皮下投与し、ダウノルビシン投与後0(投与直後)、3又は6時間にデクスラゾキサン(250mg/kg)を腹腔内投与した。対照群には生理食塩水をダウノルビシン投与直後に腹腔内投与した。薬物投与後38日間、潰瘍発現の有無を観察し、潰瘍が認められた個体についてはその面積を経時的に測定して潰瘍面積AUCを算出した。

結果:

ダウノルビシン投与後0時間における潰瘍発現率は、対照群(生理食塩水)、デクスラゾキサン投与群のいずれも100%でしたが、デクスラゾキサン投与群の潰瘍面積AUCは対照群と比較して有意に減少しました。ダウノルビシン投与後3時間におけるデクスラゾキサン投与群の潰瘍発現率は42.9%でした。ダウノルビシン投与後6時間におけるデクスラゾキサン投与群の潰瘍発現率は100%であり、潰瘍面積AUCは926.6mm2daysでした。

潰瘍発現率※1

潰瘍面積AUC※2

※1:潰瘍発現率は(観察期間に潰瘍が発現した例数)÷(全例数)×100により算出した。
※2:潰瘍面積AUCは潰瘍の発現が認められた個体の各日の潰瘍面積より算出した。

承認時評価資料:ダウノルビシン誘発皮膚潰瘍に対する作用:投与タイミングの検討

ダウノルビシン/ドキソルビシン誘発皮膚潰瘍に対する静脈内及び
 腹腔内投与による抑制作用(マウス)21)

方法:

雌B6D2F1マウスの背部にダウノルビシン(3mg/kg)又はドキソルビシン(3mg/kg)をそれぞれ皮下投与し、その直後にデクスラゾキサン(250mg/kg)を静脈内又は腹腔内投与した。対照群には生理食塩水を腹腔内投与した。薬物投与後34日間、潰瘍発現の有無を観察し、潰瘍が認められた個体についてはその面積を経時的に測定して潰瘍面積AUCを算出した。

結果:

ダウノルビシン誘発皮膚潰瘍モデルにおいて、潰瘍面積AUCは対照群(生理食塩水)では1778.1mm2days、デクスラゾキサン静脈内投与群では718.3mm2days、デクスラゾキサン腹腔内投与群では435mm2daysでした。また、デクスラゾキサン投与経路の違いによる有意差は認められませんでした。ドキソルビシン誘発皮膚潰瘍モデルにおいて、潰瘍発現率は対照群では44%、デクスラゾキサン静脈内投与群では22%でした。潰瘍面積AUCは対照群では556mm2days、デクスラゾキサン静脈内投与群では76.5mm2daysでした。また、デクスラゾキサン腹腔内投与群では潰瘍発現は認められませんでした。

ダウノルビシン誘発皮膚潰瘍モデル(マウス)

潰瘍発現率※1

潰瘍面積AUC※2

※1:潰瘍発現率は(観察期間に潰瘍が発現した例数)÷(全例数)×100により算出した。
※2:潰瘍面積AUCは潰瘍の発現が認められた個体の各日の潰瘍面積より算出した。

ドキソルビシン誘発皮膚潰瘍モデル(マウス)

潰瘍発現率※1

潰瘍面積AUC※2

※1:潰瘍発現率は(観察期間に潰瘍が発現した例数)÷(全例数)×100により算出した。
※2:潰瘍面積AUCは潰瘍の発現が認められた個体の各日の潰瘍面積より算出した。

承認時評価資料:ダウノルビシン/ドキソルビシン誘発皮膚潰瘍に対する静脈内及び腹腔内投与の作用

ダウノルビシン誘発皮膚潰瘍に対する代謝物ADR-925の作用(マウス)22)

方法:
雌B6D2F1マウスの背部にダウノルビシン(3mg/kg)を皮下投与し、ダウノルビシン投与0時間後(投与直後)に腹腔内に1回(250mg/kg)、又はダウノルビシン投与0、3及び6時間後に腹腔内に計3回(62.5mg/kg/回,187.5mg/kg/日)ADR-925を投与した。対照群には生理食塩水をダウノルビシン投与直後に1回腹腔内投与した。薬物投与後38日間、潰瘍発現の有無を観察し、潰瘍が認められた個体についてはその面積を経時的に測定して潰瘍面積AUCを算出した。
結果:
潰瘍発現率は、対照群(生理食塩水)、ADR-925単回投与群、ADR-925 1日3回反復投与群のいずれも100%でした。また、潰瘍面積AUCは、対照群では1237.8mm2days、ADR-925単回投与群では1436.2mm2days、ADR-925 1日3回反復投与群では1322.9mm2daysでした。

ADR-925:(2S)-N,N'-(Propane-1,2-diyl)bis[N-(carbamoylmethyl)aminoacetic acid]

潰瘍発現率※1

潰瘍面積AUC※2

※1:潰瘍発現率は(観察期間に潰瘍が発現した例数)÷(全例数)×100により算出した。
※2:潰瘍面積AUCは潰瘍の発現が認められた個体の各日の潰瘍面積より算出した。

承認時評価資料:ダウノルビシン誘発皮膚潰瘍に対する代謝物ADR-925の作用


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