排尿障害について考える

おしっこトラブルで悩んでませんか

おしっこトラブルで悩んでませんか

1日の「おしっこの回数」はどのくらい?

日ごろ、自分が1日に何回トイレに行っているかを意識していますか?

一般に、「正常な排尿は1日に5~7回」です。1日のおしっこの回数が8回以上だと「頻尿」、就寝してからトイレに1回以上起きなければならないと「夜間頻尿」とみなされます。いずれも不快なもので日常生活の質(QOL:クオリティ・オブ・ライフ)に影響しますが、中でも夜間頻尿はより深刻で、トイレに2回以上起きるようになると日常生活の支障度も高くなってきます。

ある夜間頻尿の調査によると、日本人は、50代になると半数以上の人が就寝中にトイレに1回以上起きるようになり、60代になると約8割の人がトイレに起きていることが報告されています。

<図>年代別の夜間頻尿に悩む人の割合

出典:夜間頻尿診療ガイドライン:日本排尿機能学会編集、2009年、ブラックウェルパブリッシング、p25. ©日本排尿機能学会より改変

主なおしっこのトラブル

おしっこの悩み(トラブル)は人によってさまざまですが、代表的なおしっこトラブルには、次のようなものがあげられます。

1.

おしっこの回数が多い

一般的に、おしっこの回数が1日8回以上を「頻尿」と呼びます。ただ、1日の排尿回数には個人差があるため、一概に8回以上が異常であるとはいえません。 頻尿の原因には、過活動膀胱や、排尿後も膀胱中に尿が残る残尿、水分の摂りすぎ(多尿)、などがあります。

2.

夜間に何度もおしっこに行きたくなる

就寝後から起床までに排尿のために1回以上起きなければならないことを「夜間頻尿」と呼びます。夜間頻尿の原因には、水分の摂りすぎ、夜間の尿量が多い(夜間多尿)、膀胱の柔軟性が下がること、睡眠時無呼吸症候群、前立腺肥大症、加齢などがあります。

3.

急におしっこがしたくなり我慢がむずかしい(尿意切迫感)
急におしっこがしたくなり我慢できずに漏れてしまう(切迫性尿失禁)

我慢できないような強い尿意が、夜間の就寝時も含めて1日のうちに、たびたび起こることを「尿意切迫感」、さらに、我慢できずに漏れてしまうことを「切迫性尿失禁」と呼びます。尿意切迫感が週に1回以上あり、1日の排尿が8回以上みられたら「過活動膀胱」とみなされます。

過活動膀胱の一番の原因は、加齢に伴って膀胱への血流が低下して、膀胱の神経が傷ついたり、硬くなったりすることです。すると膀胱が尿を十分に溜められなくなるだけでなく、傷んだ神経から分泌される物質により、ちょっとした刺激で膀胱が収縮するようになります。

過活動膀胱は、「女性の尿トラブル」のイメージが強いかもしれませんが、男性でも前立腺肥大症があると過活動膀胱の症状が出てくることがあります。治療は、薬物療法と生活指導が一般的ですが、膀胱のストレッチ運動などを組み合わせて行うのも良いでしょう。

4.

お腹に力が入った瞬間に"チョイ漏れ"してしまう(腹圧性尿失禁)

咳やくしゃみをしたときや、重い荷物を持ち上げたときなど、お腹に力が入った瞬間に漏れてしまうのが「腹圧性尿失禁」です。尿道括約筋という骨盤底筋の筋肉が緩みやすくなることによるもので、とくに、40歳以上の女性でよくみられます。

5.

排尿してもスッキリしない(残尿感がある)

「残尿感」は、加齢に伴って膀胱の血流量が減り、膀胱の収縮力、つまり尿を出し切る力が落ちることで生じます。 男性では、前立腺肥大症になると、おしっこが出にくいと感じる排尿困難になりやすく、残尿感もおこりやすくなります。

6.

尿の勢いが弱かったり、尿の出が途切れたりする

膀胱から尿道出口までの尿の流れが妨げられたり、膀胱がうまく収縮できなかったりすると、尿の勢いが弱くなる、尿の出が途切れるなどの排尿症状がみられることがあります。

7.

トイレ(排尿)の後、"チョイ漏れ"して下着やズボンが汚れることがある

男性の方で、「トイレの後、気がついたらズボンにおしっこのシミが!」というようなことを「排尿後尿滴下」と呼びます。排尿直後に膀胱や尿道に残った尿が、意識せずにしばらくしてから漏れ出てきてしまうことがあります。

トイレの後で"チョイ漏れ"を起こさないためには、排尿時の姿勢に気をつけてみてください。股間より下に尿道の出口が向くようにすることがポイントです。また、排尿後にはしっかり尿を切ることも意識するとよいでしょう。個室の便器に座って排尿するのも良いでしょう。

8.

尿をし始めるとき、痛みや違和感がある

排尿時の痛みを起こす原因には、女性に多い「急性膀胱炎」や、男性では「前立腺炎」や「尿道炎」があります。いずれも早めに適切な治療を受けることが大切です。痛みが現れたら、早めに医師に相談しましょう。

9.

「おねしょ」をしてしまうことがある

幼児期の夜尿を「おねしょ」といい、5歳以降で月1回以上のおねしょが3ヵ月以上続くと「夜尿症」といわれています。通常、寝ている間は、膀胱から脳へ、脳から膀胱への伝達系統が抑えられ、尿意がストップします。ところが、神経伝達系統が発達しきっていない子どもの場合は、この夜間の抑制機能がうまく働かず、脳からの指令で膀胱は排尿するものの覚醒はしない、このようにして起こるのが子どものおねしょです。
子どものおねしょは、神経伝達系統が成熟するにつれて、次第になくなり、遅くとも小学校6年生になるころには解消していきます。しかし、睡眠中の排尿システムに支障が生じると、大人でもおねしょ(夜尿症)をすることがあります。おもな原因はストレスです。肉体的、精神的に強いストレスがかかり続けると、自律神経のバランスが崩れてしまい、おねしょをしてしまうことがあるのです。ストレスを発散したり、減らしたりする工夫に加えて、薬物療法という選択肢もあります。

10.

トイレが遠くなる

膀胱の筋肉の力が低下してしまい、溜まった尿をスッキリと出せなくなるとトイレが遠くなります。 この状態が進行すると、自分の力では尿を押し出すことができなくなってしまい、膀胱はただ尿を溜めるだけの袋となってしまいます。尿がいつも溜まっていると、細菌が感染しやすくなり、膀胱炎や結石などの原因になるだけでなく、腎臓の機能も低下してしまうこともあります。

とくに過活動膀胱のある人は注意が必要です。過活動膀胱で長い間、過敏に働き続けた筋肉が疲れて衰え、働きが弱まることで低活動膀胱になると考えられています。近かったトイレが最近遠くなったら危険です。早めに医師に相談しましょう。

自分の症状がこれらに当てはまるかどうか確認してみましょう。これらのおしっこのトラブルには、何かしらの病気が関係しているかもしれません。

過活動膀胱症状スコア(OABSS:Overactive bladder symptom score) 国際前立腺症状スコア(I-PSS:International prostate symptom score)

代表的な疾患について解説

おしっこトラブルの代表的な疾患について、詳しく知りたい場合は、以下のページをご覧ください。

その他のおしっこのトラブル

主なおしっこのトラブル以外にも、おしっこの「色」「泡立ち方」「にごり」「臭い」などが気になったら、それは、からだの不調のサインかもしれません。

尿の色が濃いだけであればあまり心配はいりませんが、尿が赤っぽい色や茶色っぽい色をしていたら、尿に血が混じっている可能性があります。また、おしっこが泡立つようになったり、尿の泡立ちがなかなか消えなくなったりすることが毎日続くと、尿タンパクや尿糖が出ている可能性もありますので、病院できちんと検査を受けた方がよいでしょう。

おしっこには、実は多くの健康に関する情報がたくさん含まれています。もし気になることがあればそのままにせず、早めに医師に相談することが大切です。

“年だから仕方がない”ではもったいない!
「泌尿器科を受診するときの心得」

年を取ると皮膚や筋肉が衰えるように、膀胱や腎臓といった臓器も衰えていきます。とくに頻尿、尿漏れ、前立腺肥大症などは加齢現象の一つとして誰にでも起こり得るものです。

「尿が出にくくなった」「おしっこの回数が増えた」。
こうした症状があっても、「もう自分も年だから仕方がない…」とあきらめてしまい、なかなか病院に足が向かないかもしれません。

しかし、これらの症状があると、たとえ直接的には命に関わらなくても、行動範囲が狭まったり、外出しづらくなったりして、日常の生活の質(QOL)が低下してしまうこともあるでしょう。これはとてももったいないことです。

おしっこトラブルで見られる症状の多くは、専門家の指導のもとで適切な治療や処置を受ければ、悪化するのを防いだり、改善したりできる可能性が高いものです。また、おしっこにはさまざまな健康に関する情報がつまっています。少しでも気になることがあったら、気軽に医師に相談してみましょう。

トイレが心配で外出が怖い、人と会っている間もずっと不安・・・など尿漏れの悩みはつきませんが、尿漏れ対策グッズを取り入れたり、適切なトレーニング法や食生活の工夫を実践したりすることで活動の場も広がっていきます。

医師と相談し、その指示を守った上で、毎日を笑顔でスッキリ、よりアクティブに過ごしていけるように、自分に合った方法で工夫していけると良いでしょう。