糖尿病に関する検査から
何が分かるの?
監修:東京慈恵会医科大学 糖尿病・代謝・内分泌内科
主任教授
西村理明 先生
糖尿病は、膵臓で分泌されるインスリンの量が低下したり、その作用が不足して「血液中のブドウ糖が多すぎる状態」になる病気です。この状態が長く続くとさまざまな体のトラブルが起こります。このため、糖尿病の治療では、血液中のブドウ糖の量である、「血糖値」の管理が重要です。
血糖の状態を正確に把握するためには、さまざまな検査が必要です。それぞれの検査の意味や必要性を理解し、治療に積極的に取り組みましょう。
血糖値の平均を調べる検査
血糖値は、食事や運動の影響により短時間で高くなったり低くなったりします。そこで、平均的な血糖管理の状況を把握するために、ある程度長い期間における血糖値の平均を表す指標を測定することがあります。
ヘモグロビンA1c(HbA1c)値

測定方法 | 血液検査 |
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基準値 | 4.6~6.2% |
特徴 | 赤血球の成分であるヘモグロビンのうち、ブドウ糖と結合したヘモグロビン(図1)の割合をみた値。血糖管理の指標としてもっとも重要です。過去1~2ヵ月間の平均血糖値を反映します。 糖尿病のある人では、一般に7%未満を目指します。 |
血糖コントロール目標(65歳以上の高齢者については「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標」を参照)

治療目標は年齢, 罹病期間, 臓器障害, 低血糖の危険性, サポート体制などを考慮して個別に設定する.
- 注1)適切な食事療法や運動療法だけで達成可能な場合,または薬物療法中でも低血糖などの副作用なく達成可能な場合の目標とする.
- 注2)合併症予防の観点からHbA1cの目標値を7%未満とする. 対応する血糖値としては,空腹時血糖値
130mg/dL未満,食後2時間血糖値180mg/dL未満をおおよその目安とする. - 注3)低血糖などの副作用,その他の理由で治療の強化が難しい場合の目標とする.
- 注4)いずれも成人に対しての目標値であり,また妊娠例は除くものとする.
日本糖尿病学会 編・著:糖尿病治療ガイド2022-2023, P.34, 文光堂, 2022
グリコアルブミン(GA)値
測定方法 | 血液検査 |
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基準値 | 11~16% |
特徴 | 血液中のたんぱく質であるアルブミンのうち、ブドウ糖と結合したアルブミンの割合をみた値。過去約2週間の平均血糖値を反映します。 糖尿病のある人では、一般に20%未満を目指します。 |
1,5-AG(イチゴエージー)
測定方法 | 血液検査 |
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基準値 | 14.0μg/mL以上 |
特徴 | 1,5-AGはブドウ糖に似た成分で、尿から糖の排泄量が増えると低下します(ヘモグロビンA1c値、グリコアルブミン値と異なり、高いほど良い値です)。短期間の血糖変動をよく表し、とくに食後高血糖の存在を確認するのに有用です。 |
測定時の血糖値を調べる検査

血糖値は、食事のたびに上昇し、食後1~2時間をピークに、その後もとのレベルに戻ることを繰り返しています(図2)。この血糖値を測定するタイミングをずらすことで、空腹時や食後の血糖値が分かります(図3)。正常な方では食後の血糖の上昇はわずかで、狭い範囲での上昇・下降の波をくり返しますが、糖尿病のある人では空腹時だけでなく、食後の血糖値のピークも高くなってしまうため、大きな波を描きます。
空腹時血糖値

測定方法 | 血液検査 |
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基準値 | 110mg/dL未満 |
特徴 | 前の食事から10時間以上絶食した空腹の状態で測る血糖値。 |
食後血糖値

測定方法 | 血液検査 |
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基準値 | 140mg/dL未満(2時間後) |
特徴 | 食事をとってから約1、2、3時間後に測る血糖値。食後高血糖の状態が続くと、脳卒中や心筋梗塞といった血管のトラブルを引き起こすおそれがあります。 |
インスリンの分泌を調べる検査

食事により血糖値が上昇すると、膵臓が感知してインスリンというホルモンを分泌します。インスリンによってブドウ糖は肝臓や筋肉・脂肪細胞に取り込まれ、エネルギーとして使われます。その結果、血液中からブドウ糖が減り、血糖値が下がります。
インスリンの分泌を調べることで、膵臓の状態やインスリンの効き具合を確認し、糖尿病の状態を正確に把握することができます。
インスリン値
測定方法 | 血液検査 |
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基準値 | 2.7~10.4μU/mL |
特徴 | 血液中のインスリン濃度を測り、インスリンの分泌量を調べます。血糖値と併せて確認することで、インスリンの作用の効きにくさ(インスリン抵抗性)も調べることができます。 |
Cペプチド(CPR)
測定方法 | 血液検査、尿検査 |
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基準値 | (空腹時血中Cペプチド)1.0ng/mL以上 |
特徴 | 自分の体でつくられたインスリン(内因性)だけを把握することができます。空腹時血糖値と併せて確認することで、インスリン注射が必要か否かの判断にも有用です。 |