簡単解説
子宮にできる良性の腫瘍です1)。
主な症状
生理の出血量が多い(目安:普通の生理用品では2時間もたない、血の塊がでる)貧血、生理痛(市販の鎮痛薬を飲んでも効かない)などです。
症状がないことも多いとされています2)。女性ホルモン(エストロゲン)の影響を受ける病気であり、閉経とともに腫瘍は小さくなることが多いとされています3)。
主な治療法
年齢、妊娠希望の有無、症状の程度、筋腫の大きさや数、患者さんの希望などにより決まります1)。
- 薬物療法(痛み止めやホルモン療法など)
- 手術療法(子宮筋腫を取り除く手術など)
詳細な解説
病態・原因
子宮筋腫は子宮の筋肉の1つである平滑筋からできる良性の腫瘍です1)。子宮の内側にできる粘膜下筋腫(ねんまくかきんしゅ)、子宮の筋肉の中にできる筋層内筋腫(きんそうないきんしゅ)、子宮の外側にできる漿膜下筋腫(しょうまくかきんしゅ)の、3つに分類されます1)。
女性ホルモン(エストロゲン)の影響で大きくなることがあり、30歳以上の女性の3割前後にみられるとされます3)。エストロゲンの分泌量が減少する閉経後には、子宮筋腫は小さくなる傾向にあり、症状も減少します4)。子宮筋腫が原因により、不妊症や不育症を引き起こす場合もあります1)。
症状
主な症状は、生理の出血量が多い、貧血、生理痛で、その他には月経時期以外の不正出血や、腰痛、頻尿などの症状があらわれます。さらには不妊の原因にもなるとされています。
症状がないことも多いとされています2)。
診断・治療
内診、超音波断層法、MRIなどの検査を実施して診断します。
年齢、挙児希望の有無、症状の程度、子宮筋腫の位置、大きさや数、患者さんの希望などにより治療法が決まります1)。一度治療しても、子宮筋腫のみを摘出した場合以外は再発や筋腫が再度大きくなる可能性があるため、定期的な受診・診療が大切です1)。
子宮筋腫の治療
治療が不要なパターン
症状が軽く、貧血などを認めない場合は治療の必要はなく、数ヵ月ほどの検診で症状や子宮筋腫の大きさの変化の確認をします1)。
治療が必要なパターン
基本的に症状のある場合や悪性疾患である子宮肉腫を強く疑う場合などに治療の対象となります。また、挙児希望の有無、閉経までの期間、筋腫の位置などにより治療方法が異なります5)。
主な薬物療法2)、4)、5)
-
鉄剤:貧血の改善
非ステロイド性抗炎症薬:生理痛などの痛みの改善します
低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬:出血量を抑えます
子宮内黄体ホルモン放出システム:出血量を抑えます - GnRHアゴニスト、アンタゴニスト:エストロゲン・プロゲステロンなどの女性ホルモンの分泌を抑制します。症状が強い場合や手術までの間の症状軽減もしくは子宮筋腫を縮小させる目的で使用します。女性ホルモンの低下により骨の強度が弱まる可能性があるため、原則6ヵ月以上は使用できません。
手術療法(治療の一例)4)、5)、6)
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挙児希望がある場合
子宮筋腫核出術:子宮筋腫のみを摘出する
病院や症状により異なりますが、1週間程度の入院により手術を行います。 -
挙児希望がない場合
子宮全摘出術:子宮全体を摘出する
子宮動脈塞栓術:子宮筋腫の栄養血管を遮断し、壊死・縮小させる
2) 日本婦人科腫瘍学会ホームページ 子宮筋腫
3) 日本産科婦人科学会ホームページ 子宮筋腫
4) 医療情報科学研究所 編. 病気がみえる vol.9 婦人科・乳腺外科 第4版 2023: P.134-143、228, メディックメディア
5) 綾部琢哉, 板倉敦夫 編集. 標準産科婦人科学 第5版 2021: P.153-155, 医学書院
6) 永藤純子ほか. 東医大誌 75(2):227-233, 2017


