教えてQ&A

A

ANCA関連血管炎は、免疫の異常によって体の中に「ANCA」という異常な抗体が作られることで、血管の壁に強い炎症が生じる血管炎の一種です。ANCAが免疫機能の“仲間”であるはずの好中球を標的にすることで、好中球が周囲の血管を攻撃するようになり、強い炎症を引き起こします。

免疫とは

体内に侵入した細菌やウイルスなどの異物を排除する、人間の体に備わっている防御機能のこと。好中球や抗体は、免疫において重要な役割を果たす。

なぜANCAが作られるのかについては、今のところよくわかっておらず、原因は解明されていません。
ただ、最近の研究では、ANCA関連血管炎のかかりやすさに影響する遺伝子の特徴がいくつか見つかっています。
また、ANCA関連血管炎の一つである好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(こうさんきゅうせいたはつけっかんえんせいにくげしゅしょう:EPGA)については、気管支喘息や難治性の鼻炎・副鼻腔炎を有する患者さんで、好酸球が増加したあとに続いて起こることが多いとされています。

A

ANCA関連血管炎は、遺伝する病気ではありませんが、かかりやすさに影響する遺伝子の特徴がいくつか見つかっています。

ANCA関連血管炎には、顕微鏡的多発血管炎(けんびきょうてきたはつけっかんえん:MPA)、多発血管炎性肉芽腫症(たはつけっかんえんせいにくげしゅしょう:GPA)、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(こうさんきゅうせいたはつけっかんえんせいにくげしゅしょう:EGPA)の3種類がありますが、ヨーロッパではこの3種類のうちでGPAの患者さんが多いのに対し、日本を含む東アジアではMPAの患者さんが多いです。このようなことからも、人種による遺伝子の違いが関わっていることや、病気の種類によって異なる遺伝子が関係していることが想定されています。

今後、研究が進めば、病気の種類やその発症と遺伝子の関係がより明確になってくるかもしれません。

〔参考〕
厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業(難治性疾患政策研究事業)
難治性血管炎に関する調査研究班 有村義宏、難治性腎疾患に関する調査研究班 丸山彰一、
びまん性肺疾患に関する調査研究班 本間栄
「ANCA関連血管炎診療ガイドライン2017」、61~62、診断と治療社、2017年

A

ANCA関連血管炎は厚生労働省により指定難病とされており、ある一定以上の症状がある患者さんは、医療費助成制度の対象となります。

医療費の助成が認められた場合、ANCA関連血管炎の診療にかかる医療費の自己負担額に上限が設けられます。上限額は、患者さんの世帯収入などによって月額0~30,000円の間で定められ(2023年4月現在)、それを超える分は公費で負担してもらえます。

指定難病とは

「難病の患者に対する医療等に関する法律」に定められる基準(原因不明で治療方法が確立していない、患者数が少ない、長期の療養を必要とするなど)に基づいて国が指定した病気。指定難病は、医療費助成制度の対象とされる。

医療費助成制度とは

指定難病に含まれる疾患と診断され、病状が一定程度以上で、医療費の自己負担が定められた上限額を超えている場合、超過分を公的に支給する制度。

出典:難病情報センターホームページ(2023年4月現在)からの転載

医療費助成を申請する場合は、主治医に相談の上、お住まいの都道府県・指定都市の窓口に問い合わせてみてください。

A

ANCA関連血管炎は、血管に炎症が生じること(血管炎)により、さまざまな障がいが引き起こされる病気です。体の中で作られた異常な抗体「ANCA」が、白血球の一種である好中球を標的としてしまうことにより、標的にされた好中球が血管を傷つけ、血管炎を起こします。

抗体とは

免疫の役割を果たすタンパク質で、「免疫グロブリン」とも呼ばれる。抗体はそれぞれ標的とする異物が決まっており、特定の異物の目印(抗原)にのみに結合し、体から排除するように働く。

好中球とは

免疫の役割を果たす白血球の一種。白血球の中で一番多く、侵入した異物をいち早く攻撃する役割がある。

ANCA関連血管炎には、主に顕微鏡的多発血管炎(けんびきょうてきたはつけっかんえん:MPA)、多発血管炎性肉芽腫症(たはつけっかんえんせいにくげしゅしょう:GPA)、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(こうさんきゅうせいたはつけっかんえんせいにくげしゅしょう:EGPA)の3種類があります。このうち、日本ではMPAが多く、全体の約6割を占めています。

顕微鏡的多発血管炎(けんびきょうてきたはつけっかんえん:MPA)とは

3種類あるANCA関連血管炎のうちの一つ。日本では3種類の中では最も患者数が多く、腎臓、肺、神経の症状が現れやすいとされる。

多発血管炎性肉芽腫症(たはつけっかんえんせいにくげしゅしょう:GPA)とは

3種類あるANCA関連血管炎のうちの一つ。①目・鼻・耳・のど ②肺 ③腎臓 に症状が現れることが多く、鞍鼻(あんび)という特徴的な症状が現れることもある。

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(こうさんきゅうせいたはつけっかんえんせいにくげしゅしょう:EGPA)とは

3種類あるANCA関連血管炎のうちの一つ。気管支喘息や難治性の鼻炎・副鼻腔炎を有する患者さんで、好酸球が増加したあとに続いて起こることが多く、神経や皮膚、消化器、心臓、肺に症状が現れやすいとされる。

ANCA関連血管炎は、患者数が少ないまれな病気であり、早期に発見することが難しいとされています。病気の早期発見のためには、血液中のANCAの測定がとても重要です。

A

ANCA関連血管炎の症状はさまざまです。発熱、疲れやすさ、体重減少などの全身症状のほか、腎臓、肺、皮膚などの部位にも症状が現れます。どの症状が現れるかは、人によって異なります。

A

ANCA関連血管炎の症状はさまざまで、風邪などの感染症や、関節リウマチ、他の血管炎などの症状ともよく似ています。

関節リウマチとは

免疫の異常により、関節に炎症が起こり、痛みや腫れが生じる病気。進行すると、関節が変形したり、うまく動かなくなったりする。

血管炎とは

血管に炎症が起こっている状態。血管が破れたり、つまったりする。

まずは、ご自身の気になる症状の診療科で診察を受けましょう。

診察の結果、他の病気と診断されなかった場合は、主治医にANCA関連血管炎の可能性について相談してみることをお勧めします。
このウェブサイトに「ANCA関連血管炎チェックリスト」があるので、症状をチェックしてみて、当てはまるようであれば、印刷して主治医に見ていただくとよいでしょう。主治医と相談し、必要な場合には、血液中のANCAの測定などの追加の検査や、専門病院のご紹介などを検討していただきましょう。

ANCAとは

もともと体内にある自分自身の好中球を標的にしてしまう「抗好中球細胞質抗体」という異常な抗体。

A

ANCA関連血管炎は、現在の医学では完全に治すことがむずかしい病気です。しかし、早い段階で診断を受け、治療を開始すれば、多くの場合、血管の炎症を落ち着かせることができます。

また、適切な治療を続け、血管の炎症が落ち着いた状態(寛解:かんかい)を維持することができれば、健康な人とほとんど変わらない生活を送ることも可能です。

多くの場合、最初の数カ月間は入院による治療を行います。寛解になったら、その後は定期的な通院とお薬の服用を続けることになります。