ANCA関連血管炎の症状
ANCA(アンカ)関連血管炎では、主に体中の細い血管が傷つけられ、出血したり、血管がつまったりします。そのため、多くの場合、全身症状とともに体中のさまざまな部位に症状が現れ、どの症状が現れるかは、人によって異なります。
全身症状
全身の症状としては、主に以下のようなものが現れます。


体の部位別の主な症状
体のさまざまな部位に、以下のような症状が現れます。


■皮膚の症状
主に下肢に赤色~紫色の斑点(紫斑:しはん)が現れる場合があります。手足に網目状の模様がみられることもあります。


■耳の症状
耳が聴こえにくくなったり(難聴)、耳の奥が痛くなったりします。

■鼻の症状
鼻がつまったり、どろどろした黄色い鼻水や鼻血が出たりします。

■目の症状
視力が落ちたり、眼が充血したりします。眼球が少し突き出しているように見えること(眼球突出)もあります。

■のどの症状
のどが痛くなったり、声がかすれたりします。

■肺の症状
息切れがしたり、痰(たん)がからまない咳(せき)(空咳:からぜき)が出たりします。痰や咳に血が混じることもあります。

■消化器の症状
腸が炎症を起こし、腹痛が現れたり、便に血が混じったりすることがあります。

■腎臓の症状
腎臓は、血液から余分な水分や老廃物をろ過して尿を作る臓器です。腎臓の血管が傷つくと、尿に血が混じったり(血尿)、血液中のタンパク質が尿中に漏れ出したり(蛋白尿:たんぱくにょう)します。
ただし、初期の段階では尿の見た目は変わりません。そのため、血尿や蛋白尿は尿検査によって見つかります。


■神経の症状
手や足に、ピリピリする痛みや、ジンジンするしびれが現れることがあります。
また、スリッパが脱げやすい、転びやすい、物がつかみにくい、字がうまく書けない、箸がうまく使えないなど、手足に力が入りにくかったり、動きが悪くなったりもします。


疾患ごとの特徴
ANCA関連血管炎には、顕微鏡的多発血管炎(けんびきょうてきたはつけっかんえん:MPA)、多発血管炎性肉芽腫症(たはつけっかんえんせいにくげしゅしょう:GPA)、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(こうさんきゅうせいたはつけっかんえんせいにくげしゅしょう:EGPA)の3種類があり、それぞれの疾患で症状の現れ方などに特徴があります。
■顕微鏡的多発血管炎(MPA)
3種類のうち、日本では患者さんが最も多い疾患です。
腎臓、肺、神経の症状が現れやすいとされています。


■多発血管炎性肉芽腫症(GPA)
①目・鼻・耳・のど ②肺 ③腎臓 に症状が現れることが多いとされています。また、鼻すじの途中がくぼんだように変形する「鞍鼻(あんび)」が現れることがあります。

■好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)
気管支喘息や難治性の鼻炎・副鼻腔炎を有する患者さんで、好酸球が増加したあとに続いて起こることが多い疾患です。
神経の症状が現れやすく、他に皮膚や消化器、肺の症状、動悸(どうき)や息苦しさといった心臓の症状も現れやすいとされています。胸がしめつけられるように痛む「心筋梗塞(しんきんこうそく)」などの心臓の疾患を合併することもあります。


