教えて!おしっこに関するQ&A

患者さんのおしっこに関するお悩みに専門家がお答えします。

【執筆・監修】谷口 珠実 先生

(山梨大学大学院総合研究部医学域 健康・生活支援看護学講座 大学院排泄看護学教授)

治療に関するQ&A

かかりつけ医から「排尿日誌」をつけるように勧められました。排尿日誌とは、そもそもどういうものなのでしょうか?
また、排尿するたびに記録をつけるようですが、夜間も記録をつけるなど、面倒くさそうです。何を記録するのですか?

「排尿日誌」とは、ご自分の排尿の状態を把握するために、おしっこをした時間や量、そして排尿に関係する日常生活の事柄などを記録するものです。排尿日誌から得られる情報は、医師が排尿障害を正しく診断したり、治療法を検討したりする際に役立ちます。

そのため、排尿日誌はできるだけ正確に記録することが重要です。特別な行事がなく、外出も少なく、落ち着いて記録ができる日を選んで記録しましょう。

排尿日誌の記録方法については、詳しい説明をご参照ください。

排尿日誌は用紙に記入するものだけでなく、スマートフォンに入力するアプリなどもあります。ご自分が使いやすい形式のものを選び、計量カップも工夫をしながら、記録をつけてみましょう。

詳細な解説もご覧ください。

●排尿日誌は診断や治療法を検討する際の判断材料の一つ

排尿に関わる症状や病気にはさまざまなものがあるため、かかりつけ医がその原因や治療の必要性を正しく判断するためには、患者さんの排尿の状態や症状を客観的に評価する必要があります。
そのための手段の一つが「排尿日誌」です。かかりつけ医は、日誌から得られる情報を参考にしながら、排尿障害のタイプを正しく診断したり、治療の必要性や治療法を検討したり、さらには治療効果を判定したりします。

排尿日誌には、排尿した時刻とおしっこの量、尿漏れの有無や、突然トイレに行きたくなる尿意切迫感の有無の記録が基本となります。おしっこの量は、市販の計量カップなどを用いて、排尿した時にその場で量ります。
このほかにも、起床時刻や就寝時刻など排尿に関係する日常生活の事柄も記載するとよいでしょう。

排尿日誌の情報は、正しい診断や治療法の決定、お薬の効果判定に役立ちます。できるだけ正確に記載することが大切なので、特別な行事がなく、外出も少なく、落ち着いて記録ができる日を選んで記録しましょう。

●排尿に関わる日常生活の事柄も記録しましょう

排尿日誌をつける日数は、目的により異なります。おしっこをした1日の回数や量、尿漏れの状況を知るには24時間連続して記録すれば十分ですが、夜間の排尿状況を把握するためには、連続して2~3日以上記録することが望ましいとされています。
いずれにしても長期の継続ではなく、短期間ですので、かかりつけ医の指示に従い記録してみてください。

【例】夜間頻尿治療に用いられる排尿日誌

基本情報のほかに記録したい排尿に関わる日常生活の事柄には、①起床時刻や就寝時刻、②摂取した水分の種類や量、③水分を多く含む果物や汁物の摂取量、④服薬している薬の種類と服薬時間、⑤散歩や汗をかくほどの運動、⑥入浴、⑦外気温、⑧尿が漏れた理由(我慢ができなかった、くしゃみや重い荷物の上げ下げ、走るなどの動作時、特に理由は分からない)などが挙げられます。
排尿日誌の書式はさまざまで、治療の目的によって使い分けることがあります。
まずはかかりつけ医に相談の上、記載すべき項目の選定、自分に合った排尿日誌を選びましょう。
何が排尿に影響するのかが分からない場合には、日記を書くつもりで、1日を通して行ったことや飲食した内容など、気がついたことを備考欄や欄外にメモしておきましょう。
飲水量は、特に多尿や頻尿がある場合に重要な情報となります。お水やお茶などの水分の記載が必要になるので、普段使用するコップと計量カップで量り、どのくらいの量を飲んだのか記録してください。

排尿日誌は、ただ用紙に記録すれば終わりというものではありません。ご自分の排尿の状態を知り、治療によって症状がどう変化したのかを把握することも大切です。
その際には、自己判断するのではなく、かかりつけ医から的確なアドバイスをもらった上で、ご自身の状態を把握すると、治療の成果を実感しやすくなります。

●ちょっとした工夫でおしっこの計量や記録も楽に

排尿日誌をつけるには、まず、おしっこを量る計量カップを用意します。膀胱に溜められるおしっこの量は人によって異なりますが、500mL程度のサイズのものを準備すると良いでしょう。おしっこを量った後はそのまま廃棄できるもの、または、100円ショップで売っている市販の計量カップなどの活用がお勧めです。

計量カップは、身の回りにあるもので代用することもできます。
ペットボトルを使用する場合は、ペットボトルの上部をカットし、断面でけがをしないようにカットした部分にビニールテープを巻きつけます。そこに50mLずつ計量カップで水を入れて、太めのマジックで50mL、100mL、150mL、200mL…と目盛りを書き入れます。そうすれば計量カップの完成です。このように、ちょっとした工夫で簡単に計量できるようになります。

その他、1回の尿量が少ない方は自宅に余っている紙コップ、また、牛乳パックやテイクアウトしたドリンクのカップを活用しても良いでしょう。

また、トイレにメモ用紙と筆記用具も備え、おしっこを量ったら、その場ですぐに尿量をメモしましょう。その後、トイレから出たら、早めに排尿日誌に記入します。

メモ用紙は、摂取した水分の種類や量、気になったことなどを記録するときにも役立つので、排尿日誌をつける間は手元にも置いておくと便利です。

最近は、スマートフォンを使って排尿日誌を入力できるアプリなどもありますので、操作しやすいものを探してみると良いでしょう。

トイレに行くたびに記録をつけるのは面倒に感じるかもしれませんが、おしっこのトラブルを解決に導くためには大切な情報です。できるだけ正確に記録して、受診した際にかかりつけ医に提出しましょう。

50代男性です。40歳を超えてから、だんだんトイレが近くなってきました。また、トイレに行った後、スッキリしない感じが残るようになりました。これは何かの病気でしょうか?

トイレが近くなって何度も排尿することを「頻尿」と呼びます。また、トイレに行った後にスッキリしない感じが残る「残尿感」があるようですので、排尿しても膀胱の中に尿が残っている状況が考えられます。

頻尿や残尿感の原因はさまざまですが、前立腺肥大症や神経の問題があって膀胱の収縮が弱くなっていることなどが考えられます。適切に治療すれば、お悩みの症状は改善する場合もあります。気になる症状があったら、一度、泌尿器科を受診してみましょう。

詳細な説明もご覧ください

頻尿の原因/前立腺肥大症

男性特有の頻尿の原因としては、加齢などで前立腺が肥大することで、膀胱の出口や尿道が狭くなって起こる場合などが挙げられます。また、男女共通のものには、過活動膀胱(突然の強い尿意切迫感で、突然トイレに行きたくなり、行かないと漏れそうになる、もしくは漏れてしまう病気のこと)や尿路感染(膀胱炎や前立腺炎)などが挙げられます。そのほかにも、水分の摂りすぎや心因性ストレスなどの日常生活が影響していたり、持病の治療で利尿薬などのお薬を服用されている場合には、その作用が原因となったりしていることもあります。

日常生活や持病などに思い当たるふしがなく、突然トイレにいきたくなり我慢できないような症状がない場合には、男性の場合は前立腺肥大症に伴う症状がないか、 国際前立腺症状スコア(I-PSS)を用いてチェックしてみましょう (詳細は「尿の出具合チェック 前立腺肥大症」のページをご参照ください)。

一般的には、I-PSSスコアが0~7点だと「軽症」、8~19点だと「中等度」、20点以上だと「重症」と考えられています。前立腺肥大症は命に直結する病気ではありませんが、日常生活にさまざまな影響を及ぼします。また、「歳のせいだから…」とあきらめずにきちんと治療することで、お悩みの症状は改善する場合があります。重症度に関係なく、気になる症状がある人は、早めに泌尿器科を受診しましょう。

前立腺肥大症については、「―排尿トラブルを起こす男性の病気― 前立腺肥大症」のページをご参照ください。

排尿してもスッキリしない「残尿感」

また、トイレに行った後に「尿が残った感じ」がある場合には、膀胱内に尿が残っていないかどうか、あるとしたらその尿量(残尿量)はどのくらいなのかを確認しておくことも大切です。
残尿が多いと、そのあとは尿が少し溜まると膀胱が満杯になってしまうため、またすぐにトイレに行きたくなりますし、膀胱内に尿がいつも残っている状態ですと尿路感染を起こしやすくもなります。

医療機関では、超音波(エコー)機器を下腹部に当てて、排尿後に膀胱内に残った尿を測定することができます。

残尿の状況によっては治療が必要な場合もありますので、トイレに行った後、スッキリしない感じがしたら泌尿器科の医師にご相談ください。