大人なのに「おねしょ」をしてしまいました。
おねしょをしてしまう大人はいますか?
「おねしょ」は未就学の幼児によくみられるものですが、実は大人にも起こります。
5歳以降で月1回以上のおねしょが3カ月以上続く場合を「夜尿症」と言います。子どもの頃からずっと続く場合と、成長に伴っていったんは治ったのに、大人になって再発する場合があります。
さらに、働き盛りやセカンドライフを楽しむ年代になって、突然、おねしょ(夜尿症)が始まることもあります。このときのショックは大きいものですが、大人の夜尿症は誰にでも起こる可能性があり、決して珍しくはありません。
排尿機能が未発達なために起こる子どもの夜尿症と違って、大人の夜尿症にはさまざまな原因があると考えられています。

大人の夜尿症の原因には、①加齢による筋肉や神経の衰え、②心配事やストレスによるもの(自律神経の不調や睡眠障害)、③生活習慣以外にさまざまな病気が隠れている場合、などが挙げられます。
例えば、「過活動膀胱」や「前立腺肥大症」など泌尿器の病気のほか、「糖尿病」や「睡眠時無呼吸症候群」などの病気が夜尿症を引き起こす原因となっていることもありますので、注意が必要です。
それぞれの原因により治療法は異なりますので、気になる症状がある場合は、一度、泌尿器科やかかりつけ医を受診してみましょう。
詳細な解説もご覧ください。
夜尿症(おねしょ)の原因を知ろう
夜尿症を適切に治療するためには、まず、その原因を探ることが大切です。
どんな原因があるのでしょうか。ご自分に当てはまる症状はないか、一度確認してみましょう。
①加齢による筋肉や神経の衰えによるもの
年をとって、排尿をコントロールする神経や骨盤底筋などの筋力が衰えると尿漏れを起こしやすくなります。尿意を感じて目覚めてもトイレに間に合わない…といったこともあるでしょう。
尿漏れを防ぐためにも、普段から「骨盤底筋訓練」などの尿活トレーニング※で骨盤底筋を鍛えておくことをお勧めします。
※尿活トレーニングについては、「尿活のおすすめ:尿活トレーニング」をご参照ください。②心配事やストレスによるもの(自律神経の不調や睡眠障害)

睡眠中は「抗利尿ホルモン」と呼ばれるホルモンが分泌されていることで尿量が抑えられ、ぐっすり眠ることができています。
しかし、心配事やストレスがあって自律神経が乱れると、なかなか寝付けなかったり、途中で目覚めてしまったりする「睡眠障害」になり、この抗利尿ホルモンがうまく分泌されません。そのため、睡眠中に尿が膀胱にたくさん溜まってしまい、夜尿症の原因になると考えられています。
③生活習慣によるもの
生活習慣が乱れて、夜更かしなどをしてしまい、ぐっすり眠れていない、寝る前にお酒を飲みすぎてしまう、水分を摂りすぎてしまう…といったことがあると夜間に尿量が多くなり、夜尿症を起こしやすくなります。
④病気によるもの
(1)夜間の尿量が増える病気:「糖尿病」「睡眠時無呼吸症候群」など

「糖尿病」や「睡眠時無呼吸症候群」、「腎臓病」、尿の量を調節するホルモンに異常が起こる「尿崩症」と呼ばれる病気などがあると睡眠中の夜間の尿量が増えるとされています。
また、気持ちが落ち着かないために水分を摂りすぎてしまう病気(「神経性多飲症」と呼びます)も夜間の尿量が増える原因となります。
(2)膀胱機能が低下する病気:「過活動膀胱」「前立腺肥大症」など

「トイレに行く回数が多い(頻尿)」、「突然の強い尿意が我慢できない(過活動膀胱)」、「尿失禁」、これらの症状の原因となる「前立腺肥大症」などがあると、膀胱の容量が減ったり、働きが悪くなったりして、膀胱がうまくおしっこを溜められなくなってしまい、それが夜尿症の原因になることがあります。
また、「脊髄の病気」が隠れている場合もあります。
(3)その他の病気
上記以外にも「てんかん発作」や「先天性の腎尿路疾患」、「便秘」などがあると夜尿症になりやすいと言われています。ただし、これらの病気でなぜ夜尿症が起こるかは、今のところ分かっていません。
治療と生活上の注意点
夜尿症の治療法は原因により異なります。
まず、夜尿症の原因が病気によるものであることが分かっている人は、その病気をしっかりと治療することが大切です。
夜尿症の治療としては、夕食の塩分を制限するなど「食事内容を見直す」、「夕食後の水分摂取を控える」、「就寝前にトイレに行く習慣を身につける」などの日常の生活習慣を見直すことから始めます。
それでも夜尿症が続く場合は、「夜尿アラーム療法(センサーが夜尿を感知し、アラームを鳴らして目覚めさせるという治療法)」や抗利尿ホルモン薬などによる治療を行っていきます。
心配事やストレスによる自律神経の不調で眠りが浅かったり、途中で目覚めたりなどの睡眠障害が生じている場合には、こころの不調の原因を取り除くことで症状が和らぐ場合もあります。

一人で悩みを抱えずに、誰かに相談する、心配しすぎないように気分転換してリラックスする、楽しみに没頭して気持ちを切り替えるなども大切な治療と考えられています。
しかし、アルコールには利尿作用があるので注意が必要です。悩み事を忘れようと寝る前にお酒を飲みすぎるのは、逆効果になってしまうことがあります。
このように、大人の「おねしょ」にはいくつもの原因と、それぞれの原因に適した治療法があります。一人で悩まず、泌尿器科の医師やかかりつけ医に相談してみましょう。
〔参考文献〕
日本夜尿症学会編集:夜尿症診療ガイドライン2016、診断と治療社、2016年
https://minds.jcqhc.or.jp/docs/minds/nocturnal-enuresis/nocturnal-enuresis.pdf