私の体験談

炎症とは

生体が受けるさまざまな刺激に対して、部分的または全身的に起こる防御反応の一つ。熱をもつ、腫れる、赤くなる、痛む、動かしづらくなるといった症状が、さまざまな程度・組み合わせでみられる。

クレアチニン(CRE、Cre、Cr)とは

筋肉を動かすエネルギーを使うと体内に発生する物質。通常、腎臓でろ過されて尿として排出されるため、血液中のクレアチニン値が高いときは、腎臓の働きが悪くなっている可能性がある。正常値は、男性1.2mg/dl以下、女性1.0mg/dl以下(施設により多少の違いあり)。

多発血管炎性肉芽腫症(たはつけっかんえんせいにくげしゅしょう:GPA)とは

3種類あるANCA関連血管炎のうちの一つ。①目・鼻・耳・のど ②肺 ③腎臓 に症状が現れることが多く、鞍鼻(あんび)という特徴的な症状が現れることもある。

ステロイド薬(副腎皮質ステロイド)とは

体内(副腎)でつくられるステロイドというホルモンを、人工的に合成してつくった薬。炎症や免疫機能を抑える作用があり、さまざまな病気の治療に用いられる。飲み薬、注射薬、軟膏などがあり、作用の強さや作用の持続時間などが異なるさまざまな種類がある。

再燃とは

ANCA関連血管炎においては、一度消失した血管の炎症が再び現れることをいう。

腎臓とは

血液から余分な水分や老廃物をろ過して尿を作る臓器。ほかにも血圧の調整などさまざまな機能をもつ。

このコーナーでは、ANCA関連血管炎の患者さんの体験談を紹介しています。
発症当時の様子や治療のこと、日常生活のこと、病気や治療に対する思いなどを語っていただきました。

  • NEW

    体験談2

    鈴木さん(仮名)
    40代 男性
    病名:多発血管炎性肉芽腫症

「大丈夫です。必ず助けますから」
---不安の中でかけられた医師の力強い言葉。
長い入院生活も、周囲の励ましのおかげで乗り切ることができました。

風邪のような症状。でも、原因は分からず…

>症状が現れた時の状況を教えてください。

最初に症状が現れたのは、36歳の頃でした。38度台の高熱と頭痛が続いたため、近所のクリニックを受診しました。血液検査をしたところ、炎症があることを示す検査値が異常に高かったのですが、原因は不明でした。クリニックへは定期的に通院し、点滴による治療を受けていました。当時、会社で運転手の仕事をしていたのですが、治療を受けると症状は少しおさまるので、まだ何とか仕事は継続できていました。

>最初は症状を抑えられていたのですね。

はい。しかし、最初に症状が現れてから1カ月半くらいすると熱が下がらなくなり、2カ月ほど経ったころに、突然、体のだるさとひどい頭痛に襲われました。また、のどの腫れや鼻づまり、咳(せき)、息切れなども現れるようになりました。いずれも風邪のような症状でしたが、検査の結果、クレアチニンが基準値を大きく超えていることが分かり、地元の大きな病院を紹介されました。

>その病院では、どのような診断を受けたのですか?

入院してさまざまな検査を受け、「多発血管炎性肉芽腫症(GPA)かもしれない」と言われましたが、そのときはまだはっきりしていませんでした。そのころから、唇のしびれも現れるようになりました。
ステロイド薬などで治療を受け、2カ月ほどで退院しました。しかし、退院から2週間ほど経ったころに、突然視力が著しく低下しました。これには大変ショックを受けました。病院を受診すると、すぐにGPAの診療を行っている専門的な病院の腎臓内科を紹介され、入院することになりました。

「必ず助けます」。医師の力強い言葉に救われて

>その病院でGPAの確定診断を受けたのですか?

はい。私を担当してくださったのは、GPAの治療経験がある先生でした。お会いして最初に「大丈夫です。必ず助けますから」と言っていただき、心から救われた気持ちになりました。
まずは、早々に目の治療をしていただきました。ステロイド薬の減量が原因だったようで、ステロイド薬の増量などの治療ですぐに視力が回復しました。
そして、あらためて検査を受け、GPAと診断されました。それまで原因がはっきりしていないことがとても不安だったので、診断が確定して気持ちの面でも落ち着くことができました。

>そこからGPAの治療が本格的に始まったのですね。治療中はどのような状況でしたか?

入院期間中は、さまざまな薬を試しながら治療を続ける毎日でした。思考力が落ちたり、髪の毛が抜けたり、体がうまく動かなくなったりしましたが、一番大変だったのは不安との戦いでした。入院に伴って会社を休職しており、「元の生活に戻れないのではないか」といった考えがつきまとい、入院期間が長くなるにつれて精神的に不安定になったりもしました。しかし、家族や友達、看護師や医師の皆さんが絶えず励まし続けてくれ、乗り切ることができました。彼らには、今でも感謝の気持ちでいっぱいです。
治療のおかげで症状は徐々に改善していきました。最終的には症状がほぼ無くなり、検査値も安定したところで退院することができました。

>入院期間はどのくらいでしたか?

約1年半です。ただ、体がうまく動かない症状が残っていたので、リハビリを専門的に行っている病院に転院しました。2カ月間くらい入院でリハビリを行い、人並みに動けるようになって退院しました。

現代の医学を信じて、前向きな気持ちで治療を受けてほしい

>退院後は、どのような生活を送っていますか?

退院して11年ほど経ちますが、再燃は一度もありません。多少唇のしびれは残っていますが、気になるほどではなく、他のGPAの症状もありません。治療としては、少量のステロイド薬を飲み続けていて、2〜3カ月に1回程度通院しています。食事の制限も特にありません。
仕事にも復帰できました。職場を変えてもらい、現在は倉庫内で勤務しています。家庭では、妻と一緒に3匹の猫を世話しながら幸せに暮らしています。

>自分が「ANCA関連血管炎かもしれない」と考えている方がいたら、何を伝えたいですか?

私の場合、最初に現れた症状は風邪のようなものでしたが、病院にかかって検査を受けたことで、比較的早期にGPAの診断を受けることができました。治療開始が遅れていたら、腎臓に障害を負っていたかもしれないとのことです。やはり、体調に異変を感じたら、できるだけ早く病院を受診して原因をつきとめることが大事だと思います。

>最後に、ANCA関連血管炎と診断され、これから治療を始める方に、メッセージをお願いします。

私自身の経験をふり返ると、不安などから来るストレスも体にダメージを与えていたように思います。現代の医学を信じて、「元気になったら〇〇をしよう」といった希望をもちながら、前向きな気持ちでいてほしいです。そして、どんなときでも、生きていることのありがたさを忘れないでほしいです。
また、ご家族やお友達の方々には、患者さんを励まし、支えていただければと思います。