ANCA関連血管炎を考える
ANCA関連血管炎の原因

ANCA関連血管炎の原因

ANCA(アンカ)関連血管炎は、血管の壁に強い炎症が生じる血管炎の一種です。免疫の異常により、体の中でANCAという異常な抗体が作られることが特徴的であり、このANCAが炎症の発生に深く関係しています。なぜANCAが作られてしまうのかは、今のところよくわかっていません。
ANCA関連血管炎は遺伝するものではないと考えられていますが、かかりやすさに影響する遺伝子の特徴がいくつか見つかっています。
また、ANCA関連血管炎には三つの種類があり、そのうちの一つである好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(こうさんきゅうせいたはつけっかんえんせいにくげしゅしょう:EGPA)は、気管支喘息のある方やアレルギーをお持ちの方に起こりやすいとされています。

血管炎とは

血管に炎症が起こっている状態。血管が破れたり、つまったりする。

免疫とは

体内に侵入した細菌やウイルスなどの異物を排除する、人間の体に備わっている防御機能のこと。好中球や抗体は、免疫において重要な役割を果たす。

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(こうさんきゅうせいたはつけっかんえんせいにくげしゅしょう:EGPA)とは

3種類あるANCA関連血管炎のうちの一つ。気管支喘息や難治性の鼻炎・副鼻腔炎を有する患者さんで、好酸球が増加したあとに続いて起こることが多く、神経や皮膚、消化器、心臓、肺に症状が現れやすいとされる。

抗体とは

免疫の役割を果たすタンパク質で、「免疫グロブリン」とも呼ばれる。抗体はそれぞれ標的とする異物が決まっており、特定の異物の目印(抗原)にのみに結合し、体から排除するように働く。

免疫とは

人間の体には、体内に侵入した細菌やウイルスなどの異物を排除する防御機能が備わっています。この防御機能のことを「免疫」といいます。この免疫において、重要な役割を果たしているのが血液中の白血球です。白血球にはいくつか種類がありますが、その中の一つに「好中球」があります。好中球には、侵入した異物をいち早く攻撃する働きがあります。

また、同じく白血球の種類の一つである「リンパ球」には、B細胞、T細胞、NK細胞(ナチュラルキラー細胞)があります。その内のB細胞は、特定の異物に対して働く「抗体」を作り出します。抗体は、その異物にある特定の目印(抗原)のみに結合して、異物を体から排除する働きをします。

免疫のしくみ 免疫のしくみ

ANCAとは

ANCAは、「抗好中球細胞質抗体」という抗体の一種です。英語で抗好中球細胞質抗体を意味する“Anti-Neutrophil Cytoplasmic Antibody”を略して「ANCA(アンカ)」とよばれます。ANCAは、体内に侵入した異物ではなく、免疫の役割を果たす“仲間”であるはずの好中球を標的にしてしまう異常な抗体(自己抗体)です。

ANCA

ANCAに標的とされた好中球が血管を傷つける

ANCAに標的とされた好中球は、強い炎症を引き起こし、周囲の血管を攻撃するようになります。その結果、血管が破れたり、つまったりする「血管炎」が引き起こされます。

この病気で血管炎を起こすのは、主に全身の細い動脈・静脈や、その先につながる毛細血管です。そのため、細い血管が多く存在する腎臓や肺、皮膚、目、耳、鼻などに症状が現れやすいとされています。