ANCA関連血管炎を考える
ANCA関連血管炎の症状

ANCA関連血管炎の症状

ANCA(アンカ)関連血管炎では、主に体中の細い血管が傷つけられ、出血したり、血管がつまったりします。そのため、多くの場合、全身症状とともに体中のさまざまな部位に症状が現れ、どの症状が現れるかは、人によって異なります。

全身症状

全身の症状としては、主に以下のようなものが現れます。

全身症状 全身症状

体の部位別の主な症状

体のさまざまな部位に、以下のような症状が現れます。

■皮膚の症状

主に下肢に赤色~紫色の斑点(紫斑:しはん)が現れる場合があります。手足に網目状の模様がみられることもあります。

紫斑の例(提供:東京女子医科大学病院膠原病リウマチ痛風センター膠原病リウマチ内科)
網目状の模様の例(川上 民裕 日本臨床免疫学会会誌Vol.30 No.3 156-164 より転載)

■耳の症状

耳が聴こえにくくなったり(難聴)、耳の奥が痛くなったりします。

■鼻の症状

鼻がつまったり、どろどろした黄色い鼻水や鼻血が出たりします。

■目の症状

視力が落ちたり、眼が充血したりします。眼球が少し突き出しているように見えること(眼球突出)もあります。

■のどの症状

のどが痛くなったり、声がかすれたりします。

■肺の症状

息切れがしたり、痰(たん)がからまない咳(せき)(空咳:からぜき)が出たりします。痰や咳に血が混じることもあります。

■消化器の症状

腸が炎症を起こし、腹痛が現れたり、便に血が混じったりすることがあります。

■腎臓の症状

腎臓は、血液から余分な水分や老廃物をろ過して尿を作る臓器です。腎臓の血管が傷つくと、尿に血が混じったり(血尿)、血液中のタンパク質が尿中に漏れ出したり(蛋白尿:たんぱくにょう)します。
ただし、初期の段階では尿の見た目は変わりません。そのため、血尿や蛋白尿は尿検査によって見つかります。

■神経の症状

手や足に、ピリピリする痛みや、ジンジンするしびれが現れることがあります。
また、スリッパが脱げやすい、転びやすい、物がつかみにくい、字がうまく書けない、箸がうまく使えないなど、手足に力が入りにくかったり、動きが悪くなったりもします。

疾患ごとの特徴

ANCA関連血管炎には、顕微鏡的多発血管炎(けんびきょうてきたはつけっかんえん:MPA)、多発血管炎性肉芽腫症(たはつけっかんえんせいにくげしゅしょう:GPA)、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(こうさんきゅうせいたはつけっかんえんせいにくげしゅしょう:EGPA)の3種類があり、それぞれの疾患で症状の現れ方などに特徴があります。

■顕微鏡的多発血管炎(MPA)

3種類のうち、日本では患者さんが最も多い疾患です。
腎臓、肺、神経の症状が現れやすいとされています。

■多発血管炎性肉芽腫症(GPA)

①目・鼻・耳・のど ②肺 ③腎臓 に症状が現れることが多いとされています。また、鼻すじの途中がくぼんだように変形する「鞍鼻(あんび)」が現れることがあります。

■好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)

気管支喘息や難治性の鼻炎・副鼻腔炎を有する患者さんで、好酸球が増加したあとに続いて起こることが多い疾患です。
神経の症状が現れやすく、他に皮膚や消化器、肺の症状、動悸(どうき)や息苦しさといった心臓の症状も現れやすいとされています。胸がしめつけられるように痛む「心筋梗塞(しんきんこうそく)」などの心臓の疾患を合併することもあります。