リスクアセスメント
■POINT EVのリスクを静脈穿刺前にアセスメントする
がん患者さんは化学療法による血管の脆弱化に加え、外科手術後のリンパ浮腫などの循環障害などにより血管外漏出が起きやすい状態にあります。下記のリスク因子を十分に認識することが重要です。また、レジメンに壊死起因性抗がん剤(vesicant drug)が1種類でも含まれる場合は、治療開始前にチームで患者さんをアセスメントします。
EVの主なリスク因子(複数の因子がある場合、EVのリスクは高くなる)
- ① 高齢者(血管の弾力性や血流量の低下)
- ② 栄養不良患者
- ③ 糖尿病や皮膚結合織疾患などに罹患している患者
- ④ 肥満患者(血管を見つけにくい)
- ⑤ 血管が細くて脆い患者
- ⑥ 化学療法を繰り返している患者
- ⑦ 多剤併用化学療法中の患者
- ⑧ 循環障害のある四肢の血管(上大静脈症候群や腋窩リンパ節郭清後など、病変や手術の影響で浮腫、静脈内圧の上昇を伴う患側肢の血管)
- ⑨ 輸液などですでに使用中の血管ルートの再利用
- ⑩ 抗悪性腫瘍薬の反復投与に使われている血管
- ⑪ 腫瘍浸潤部位の血管
- ⑫ 放射線療法を受けた部位の血管
- ⑬ ごく最近施した皮内反応部位の下流の血管(皮内反応部位で漏出が起こる)
- ⑭ 同一血管に対する穿刺のやり直し例
- ⑮ 24時間以内に注射した部位より遠位側
- ⑯ 創傷瘢痕がある部位の血管
- ⑰ 関節運動の影響を受けやすい部位や血流量の少ない血管への穿刺例
血管確保
■POINT 穿刺部位を選択する
- ① より末梢側から
- ② 太く弾力のある血管を
- ③ 穿刺針の固定が容易な部位を選択する
避けたほうがよい部位
- × 利き手側
- × 出血斑や硬化組織のある部位
- × 蛇行している血管
- × 骨突出部位や関節付近
- × 神経や動脈に隣接した部位
- × 30分以内に穿刺した血管
- × 肘関節窩
- × 腋窩リンパ節郭清や放射線照射を
行っている患側上肢 - × 下肢静脈
抗がん剤の血管外漏出の予防と対応ガイド(PDF)