医薬品
2019年9月20日
低分子チロシンキナーゼ阻害剤「ホスタマチニブ(R788)」の慢性特発性血小板減少性紫斑病を対象とした国内第Ⅲ相臨床試験開始のお知らせ
キッセイ薬品工業株式会社(代表取締役会長兼最高経営責任者:神澤陸雄)は、2018年10月にライジェルファーマシューティカルズ社(Rigel Pharmaceuticals, Inc.、本社:アメリカ、President and CEO:Raul Rodriguez、以下「ライジェル社」)より、日本・中国・韓国・台湾における独占的開発・販売権を取得した、低分子チロシンキナーゼ阻害剤「ホスタマチニブ(一般名、開発番号:R788)につきまして、慢性特発性血小板減少性紫斑病(慢性ITP)*1患者さんを対象とした国内第Ⅲ相臨床試験を開始しましたことをお知らせいたします。
慢性ITPは、血小板減少を来す他の明らかな病気や薬剤の服用がないにもかかわらず血小板数が減少し、出血しやすくなる疾患であり、厚生労働大臣により「指定難病」に指定されています。本試験は、慢性ITP患者さんを対象として、ホスタマチニブを経口投与した時の有効性と安全性について、プラセボを対照とした二重盲検法により検討するものです。
ホスタマチニブは、ライジェル社により創製された、経口投与可能な低分子化合物であり、チロシンキナーゼの一つであるSYK*2を阻害し、マクロファージによる血小板の破壊を抑制することにより、血小板の減少を抑制し、慢性ITPの出血症状を改善することが期待されています。米国ではオーファン指定を受け、ライジェル社により2018年5月に発売され、欧州では同年10月に製造販売承認の申請が受理され、審査が行われています。
当社は、ホスタマチニブを慢性ITPの患者さんに早期に提供できるよう、本試験を適切に進めてまいります。
以上
<ご参考>
*1: 特発性血小板減少性紫斑病(ITP)について
ITPは、血小板減少の原因となる他の明らかな病気や薬の服用がないにもかかわらず、血小板数が10万/μL未満に減少し、出血しやすくなる病気です。
臨床症状としては、主として皮下出血(点状出血または紫斑)を認め、歯肉出血、鼻出血、下血、血尿、頭蓋内出血なども起こることがあります。ITPは日本では指定難病であり、2017年度国内のITP患者数は約2万人※で、年間の新患発生は10万人当たり2.4人と報告されています※※。ITPの原因は未だ明確になっていませんが、血小板に対する自己抗体が産生され、この自己抗体により脾臓でマクロファージによる血小板の破壊が亢進するために、血小板数が減少すると考えられています。ITPの治療として、副腎皮質ステロイドやTPO(トロンボポエチン)受容体作動薬の投与や、手術による脾臓の摘出などが行われます。
※: 2017年度末現在の特定医療費(指定難病)受給者証所持者数より推定
※※: 日本内科学会雑誌、2009、98(7):1619-26
*2: SYK(Spleen Associated Tyrosine Kinase、脾臓由来チロシンキナーゼ)について
SYKは蛋白質のチロシン残基を特異的にリン酸化する酵素であるチロシンキナーゼの一つです。SYKは、IgE受容体の活性化を介した肥満細胞のヒスタミン放出やサイトカイン産生、及び、自己抗体(IgG)と結合した血小板に対するマクロファージの貪食・破壊作用、破骨細胞の活性化、さらにリンパ球B細胞の分化や活性化の役割を担っています。また、ある種の癌や自己免疫疾患、真菌やウイルス感染との関連も明らかになっています。
ライジェルファーマシューティカルズ社(Rigel Pharmaceuticals, Inc.)について(www.rigel.com)
アメリカのカリフォルニア州に本社を置く、Nasdaq上場(Nasdaq:RIGL)のバイオテクノロジー企業です。免疫及び血液疾患、癌及び希少疾病領域における新規の低分子化合物の研究、開発及び提供に注力しています。詳細につきましては、同社ホームページをご参照ください。
低分子チロシンキナーゼ阻害剤「ホスタマチニブ(R788)」の慢性特発性血小板減少性紫斑病を対象とした国内第Ⅲ相臨床試験開始のお知らせ 【PDF/467.9 KB】