医薬品
2021年9月27日
選択的C5a受容体拮抗薬「タブネオス®カプセル10mg」国内における製造販売承認取得のお知らせ
キッセイ薬品工業株式会社(代表取締役会長兼最高経営責任者:神澤陸雄、以下「キッセイ薬品」)は、本日、選択的C5a受容体拮抗薬「タブネオス®カプセル10mg」(一般名:アバコパン)につきまして、厚生労働省より国内における製造販売承認を取得しましたので、お知らせいたします。
本剤は、抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎に分類される顕微鏡的多発血管炎(MPA)、多発血管炎性肉芽腫症(GPA)に対し、C5a受容体拮抗作用により治療効果を発揮する、ファーストインクラスの経口剤です。キッセイ薬品は、2017年6月に、ビフォー・フレゼニウス・メディカル・ケア・リーナル・ファーマ社(Vifor Fresenius Medical Care Renal Pharma Ltd.、本社:スイス、CEO:Alfredo Merino、以下「VFMCRP社」)より、日本における本剤の独占的開発・販売権を取得しました。その後、創製元であるケモセントリクス社(ChemoCentryx, Inc.、本社:米国、CEO:Thomas J. Schall)がスポンサーとして実施した国際共同第Ⅲ相臨床試験(ADVOCATE試験)に、キッセイ薬品はVFMCRP社とともに参画し、良好な結果を得たことから、MPA及びGPAを適応症として、2021年2月に製造販売承認申請を行っていました。なお、本剤は、2019年3月に、厚生労働大臣より希少疾病用医薬品の指定を受けています。また、海外においては、米国ではケモセントリクス社が、欧州ではVFMCRP社が、それぞれ承認申請中であり、世界に先駆けて日本での製造販売承認取得となりました。
MPA及びGPAの治療目標は、寛解導入及び寛解維持とされており、長期的予後を改善する上で早期に炎症を抑制することや、臓器障害の一因となり死亡リスクを高める再燃を防止又は軽減することが重要とされています。寛解導入療法では高用量のグルココルチコイド(副腎皮質ステロイド)と免疫抑制薬の併用が、寛解維持療法では低用量のグルココルチコイドと免疫抑制薬の併用が、標準治療として推奨されていますが、グルココルチコイド、免疫抑制薬ともに重篤な副作用のリスクが指摘されています。ADVOCATE試験の結果から、本剤は、グルココルチコイドの投与量の節減又は短期的な使用を可能とし、再燃を抑制することができる新たな治療選択肢となることが期待されます。
キッセイ薬品の最高経営責任者である神澤陸雄は、「当社は、十分な治療薬がない難病、希少疾病の治療薬の開発に取り組んでいます。今般、世界に先駆けてタブネオス®の製造販売承認を得られたことを、大変うれしく思うと同時に、MPA及びGPAに苦しまれている患者さんが、穏やかで健やかな暮らしを営めるよう、注力することを強く決意しています。」と述べています。
また、Vifor Pharma GroupのCEOであるAbbas Hussainは、「タブネオス®が世界で最初に日本で承認されたことをうれしく思います。MPA及びGPAは日本では難病指定されており、長期治療が必要な希少疾病ですが、既存の治療法には多くの課題が存在します。画期的な治療薬であるタブネオス®が、日本の患者さんにより良い、より健康的な生活をもたらすことを確信しています。」と述べています。
キッセイ薬品は、ANCA関連血管炎ならびにタブネオス®に関する情報提供活動を的確に行うために、2021年4月にレアディジーズプロジェクトを設置しました。タブネオス®を円滑に流通させ、適正使用を推進することで、MPA及びGPAの治療に一層貢献できるよう努めてまいります。
なお、本承認に伴いマイルストン支払いが発生しますが、2021年5月に公表しました2022年3月期通期の連結業績予想に織り込み済みです。
以上
《ご参考》
タブネオス®カプセル10mg 製品概要
販売名 :タブネオス®カプセル10mg(TAVNEOS® Cap.10mg)
一般名 :アバコパン
効能・効果:顕微鏡的多発血管炎、多発血管炎性肉芽腫症
用法・用量:通常、成人にはアバコパンとして1回30mgを1日2回朝夕食後に経口投与する。
剤形 :カプセル剤
製造販売元:キッセイ薬品工業株式会社
製造販売承認取得日:2021年9月27日
抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎(AAV)について
免疫複合体の沈着が無いか、ほとんどみられない、小血管の壊死性炎症と、高いANCA陽性率を特徴とする難治性疾患です。腎臓、肺、神経系などさまざまな臓器で発症がみられます。日本における患者数は1万人を超えると推定されています※1。現在のAAV治療における副腎皮質ステロイドを中心とした標準治療は有効性を示しますが、臨床的に問題となる副作用が高頻度に認められるなどの課題が報告されています※2。
※1: 2019年度末現在の特定医療費(指定難病)受給者証所持者数より推定
※2: The New England Journal of Medicine, 2021, 384(7), 664
タブネオス®カプセル10mg(一般名:アバコパン)について
本剤は、ケモセントリクス社により創製された、腎領域等における希少疾病治療薬です。経口投与可能な低分子化合物で、好中球をはじめとする白血球などに存在するC5a受容体に拮抗し、白血球の遊走及び接着分子の発現誘導を妨げることで、治療効果を発揮します。本剤の適応である、AAVに分類されるMPA及びGPAは、厚生労働省特定疾患に指定されている難治性炎症疾患で、多くの場合、壊死性糸球体腎炎を呈します。ADVOCATE試験の結果から、アバコパンによる治療は、MPA及びGPAに対し有効性を示すとともに、従来の治療における副作用のリスクを軽減することが期待されます。
ケモセントリクス社は、米国を除く全世界の権利をVFMCRP社に許諾しており、VFMCRP社は、日本における本剤の権利をキッセイ薬品に再許諾しています。
ADVOCATE試験について
日本を含む18の国と地域においてMPA及びGPAの患者さん331人を対象に、現在の標準治療薬である副腎皮質ステロイドを対照として実施された二重盲検比較試験です。本試験の結果、主要評価項目であるバーミンガム血管炎活動性スコア(BVAS)で評価した血管炎症状について、アバコパン群はステロイド群に対し、投与26週時の寛解率で非劣性を示し、投与52週時の寛解維持率で統計的に有意な優越性を示しました。また、安全性につきましても、アバコパン群は、ステロイド群と比較して高い忍容性が認められています。
本試験結果は、英文医学雑誌「The New England Journal of Medicine」 2021年2月18日号に掲載されました。
David R.W. Jayne, M.D., Peter A. Merkel, M.D., M.P.H., Thomas J. Schall, Ph.D., and Pirow Bekker, M.D, Ph.D., for the ADVOCATE Study Group. Avacopan for the Treatment of ANCA-Associated Vasculitis
The New England Journal of Medicine, 2021, 384(7), 599 https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2023386
C5a受容体(C5aR)について
血液中に含まれるタンパク質で、さまざまな免疫反応や感染防御に関与する補体には、多くの種類があり、一般に補体の英語表記Complementの頭文字をとってCで表されます。そのうちC5aは好中球などを炎症部位に呼び寄せる走化性因子として働きます。C5aRを阻害することで、血管を傷つける好中球などの過剰な働きを抑えることができ、抗炎症作用を発揮すると考えられています。
ケモセントリクス社(ChemoCentryx, Inc.)について
米国に本社を置く、NASDAQに上場しているバイオ医薬品企業です(NASDAQ:CCXI)。自己免疫疾患、炎症性疾患及び癌領域での経口治療薬の創薬、開発及び商業化にフォーカスしています。アバコパンはケモセントリクス社の創製品です。
ビフォー・フレゼニウス・メディカル・ケア・リーナル・ファーマ社(Vifor Fresenius Medical Care Renal Pharma Ltd.)について
VFMCRP社は、ビフォーファーマグループに所属するフレゼニウスメディカルケア社との合弁会社であり、世界中の慢性腎臓病(CKD)患者さんの生活を改善する革新的で高品質な治療法を開発、販売しています。キッセイ薬品は、VFMCRP社より高リン血症治療薬「ピートル®(欧米製品名:VELPHORO®)」を導入しています。ビフォーファーマグループは、国際的な製薬企業であり、鉄欠乏症、腎臓病、心腎疾患治療の世界的なリーダーになることを目指しています。本社をスイスに置き、スイス証券取引所に上場しています(SIX Swiss Exchange, VIFN, ISIN:CH0364749348)。
選択的C5a受容体拮抗薬「タブネオス®カプセル10mg」国内における製造販売承認取得のお知らせ 【PDF/559.4 KB】