医薬品
2021年12月21日
チロシンキナーゼ阻害剤「ホスタマチニブ」の 慢性特発性血小板減少性紫斑病を対象とした国内第Ⅲ相臨床試験の 第Ⅰ期解析結果について ―主要評価項目を達成―
キッセイ薬品工業株式会社(本社:長野県松本市、代表取締役会長兼最高経営責任者:神澤陸雄、以下「キッセイ薬品」)は、ライジェルファーマシューティカルズ社(Rigel Pharmaceuticals, Inc.、本社:アメリカ、President and CEO:Raul Rodriguez、以下「ライジェル社」)より技術導入したチロシンキナーゼ阻害剤「ホスタマチニブ(一般名、開発番号:R788)」について、慢性特発性血小板減少性紫斑病を対象とした国内第Ⅲ相臨床試験第Ⅰ期の解析において主要評価項目を達成しましたことをお知らせいたします。
ホスタマチニブは、ライジェル社により創製された経口投与可能なチロシンキナーゼ阻害剤で、当社は、2018年10月に日本、中国、韓国、台湾における開発及び販売権を取得し、国内第Ⅲ相臨床試験を実施しています。
本試験は、慢性特発性血小板減少性紫斑病患者さん34例を対象として、ホスタマチニブを1日2回経口投与した際の有効性と安全性を検討するために、プラセボを対照として24週間投与する二重盲検期(第Ⅰ期)と、ホスタマチニブを最長52週間まで継続投与する治療期(第Ⅱ期)、さらにその後、長期投与を行う治療期(第Ⅲ期)で構成されています。第Ⅰ期においては、「Stable platelet response の達成割合(14週から24週の6回の来院のうち、4回以上で血小板数が50,000/μL以上の患者の割合)」を主要評価項目としています。
今般、第Ⅰ期を対象とする解析を行い、主要評価項目である「Stable platelet response の達成割合」は、ホスタマチニブ群ではプラセボ群と比べ統計学的に有意に高い結果が得られました。また、ホスタマチニブ群で認められた主な副作用は、胃腸障害、高血圧、好中球減少症及び肝機能障害でした。
現在、第Ⅰ期の詳細な解析を行うとともに、第Ⅱ期以降の治療期が進行中です。
キッセイ薬品は、慢性特発性血小板減少性紫斑病をはじめとする希少疾病領域の研究開発に取り組み、新たな治療選択肢を提供できるように努めてまいります。
なお、本件が2022年3月期の当社連結業績に与える影響は、軽微です。
以上
《ご参考》
特発性血小板減少性紫斑病(ITP)について
ITPは、血小板減少の原因となる他の明らかな病気や薬の服用がないにもかかわらず、血小板数が10万/μL未満に減少し、出血しやすくなる病気です。病状の経過により発症から6ヵ月以内に血小板数が正常に回復する「急性型」と、6ヵ月以上血小板減少が持続する「慢性型」に分類されます。ホスタマチニブは慢性型ITPを対象としています。
臨床症状としては、主として皮下出血(点状出血または紫斑)を認め、歯肉出血、鼻出血、下血、血尿、頭蓋内出血なども起こることがあります。ITPは日本では指定難病であり、2019年度国内のITP患者数は約1.7万人※で、年間の新患発生数は10万人当たり2.16人と報告されています※※。ITPの原因は未だ明確になっていませんが、血小板に対する自己抗体が産生され、この自己抗体により脾臓でマクロファージによる血小板の破壊が亢進するために、血小板数が減少すると考えられています。ITPの治療として、副腎皮質ステロイドやTPO(トロンボポエチン)受容体作動薬の投与や、手術による脾臓の摘出などが行われます。
※: 2019年度末現在特定医療費(指定難病)受給者証所持者数より推定
※※: Int J Hematol、2011、93 :329-35
ホスタマチニブ(一般名、開発番号:R788)について
ホスタマチニブは、ライジェル社が創製した経口投与可能な低分子化合物で、チロシンキナーゼを阻害し、マクロファージによる血小板の破壊を抑制することにより、血小板の減少を抑制し、慢性ITPの出血症状を改善することが期待されています。本剤は、米国及び日本で希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)の指定を受けており、米国では2018年4月に承認、同年5月に発売され、その後、ドイツなど欧州やカナダでも発売されています。また、当社が開発権及び販売権を取得した韓国及び中国について、本年6月と8月にそれぞれ韓国企業、中国企業とサブライセンス契約を締結しています。
ライジェルファーマシューティカルズ社(Rigel Pharmaceuticals, Inc.)について
アメリカのカリフォルニア州に本社を置く、Nasdaq上場(Nasdaq:RIGL)のバイオテクノロジー企業です。免疫、血液疾患、癌及び希少疾病領域における新規の低分子化合物の研究、開発及び提供に注力しています。詳細につきましては、同社ホームページをご参照ください(https://www.rigel.com/)。
チロシンキナーゼ阻害剤「ホスタマチニブ」の 慢性特発性血小板減少性紫斑病を対象とした国内第Ⅲ相臨床試験の 第Ⅰ期解析結果について ―主要評価項目を達成― 【PDF/366.1 KB】