昭和大学医学部内科学講座 腎臓内科学部門 客員教授 秋澤 忠男先生

昭和大学医学部内科学講座
腎臓内科学部門 客員教授

秋澤 忠男 先生

略歴
昭和48年 東京医科歯科大学 医学部 卒業
同年 同 大学 医学部 第二内科 入局
昭和51年9月 昭和大学 藤が丘病院 内科(腎臓)助手 講師、助教授を経て
平成11年4月 和歌山県立医科大学 腎臓内科・血液浄化センター 教授
平成17年9月 昭和大学 医学部 内科学講座 腎臓内科学部門 教授
平成25年4月 同 客員教授


透析療法を受けておられる患者さん、ご家族の皆様へ


透析療法を受けておられる患者さん、ご家族の皆様、お元気にお過ごしでしょうか。
透析療法を最近始められた患者さん、ご家族の皆様は、透析療法に慣れられたでしょうか。
透析療法を始めたことで、日々の生活が大きく変わったことと思います。
透析療法は命を支える大切な生活の一部です。
そうした意味で、透析の開始(導入)は、いわば“新しい人生のスタート”ともいえるでしょう。

透析療法を始めるにあたり、また透析療法を続けるなかで、不安を感じることもあると思います。新しい人生ですから、不安を感じるのは当然です。しかし、不安を抱えたままでは、安心して透析療法を続けることはできません。
そこで、皆様方の不安を少しでも軽くできたらと思い、以下のお話をさせて頂くことにしました。

日本では、およそ32万5千人(人口386人に1人)の方々が透析療法を受けていますが、そのうち約2万5千人は透析療法を20年以上続けており、最も長い方では47年6か月も透析療法と付き合っていらっしゃいます(2015年末日現在)1)
このことは、透析療法と上手に付き合えれば、この治療を長く続けることができることを表しています。

透析療法を受けるかどうかを悩んでいた時に、「透析したら、人生は終わりだ」と悲嘆した方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、定期的にきちんと透析療法を継続し、主治医とスタッフの指示や助言にしたがって日常生活に気を配り、決められた服薬を守るなど、適切な自己管理を行っていれば、健康な人にひけをとらない充実した生活を送ることができるのです。

ご高齢であっても、毎日を前向きに過ごされている方はたくさんいらっしゃいます。これは健康な方だけではなく、透析患者さんでも同じことです。

生きる年数を延ばすことだけでなく、いかに『自分らしく、楽しく、有意義に』過ごせるのかも、人生を送るうえでは大切なことではないでしょうか。
失われた腎臓の働きを、せっかく透析療法で補うのですから、人生を楽しまなければもったいないでしょう。
病気や透析療法のことを悩むのではなく、これからの人生を楽しむことを考えてはいかがでしょうか。

とはいえ、透析患者さんには元の病気を治療し、食事や水分摂取などの自己管理を行うなど、療養生活で守っていただきたい点も数多くあります。
これらの注意事項を守ることはとても大切ですが、そのことばかりに気を取られていると、気分が滅入ることもあるでしょう。

そこで、こうした努力や注意がストレスにならないように透析療法を続けるにはどうしたらよいかを考えてみましょう。

透析療法とうまく付き合っていくには、まず、“透析療法との付き合い方を正しく理解すること”が大切です。正しく理解できれば、納得できます。納得できれば、ストレスを感じることも少なくなるでしょう。

また、“前向きな気持ちと人生を楽しむ心の余裕をもつこと”も必要です。
自分と同じように透析療法を続けながらも毎日を楽しんでいる方がたくさんいらっしゃることが分かれば、安心感が得られますし、そこから前向きな気持ちや心の余裕も生まれてくるのではないでしょうか。

そこで、この『~笑顔でいきいき~ 透析“新”ライフ』では、透析療法とうまく付き合い、長く続けていくために役立つ情報を提供するとともに、透析療法を続けながら自分の人生を切り開いている患者さんたちの声も紹介していきたいと思っています。

ここで紹介する情報が、皆様方が透析療法と長く付き合うのに役立ち、また充実した人生を送るうえでのヒントになれば幸いです。

〔参考文献〕
1)日本透析医学会 統計調査委員会. 図説 わが国の慢性透析療法の現況(2015年12月31日現在)
http://docs.jsdt.or.jp/overview/index.html