「かゆみを我慢していませんか?」かゆみチェックリスト

「かゆみを我慢していませんか?」かゆみチェックリスト

「かゆみを我慢していませんか?」かゆみチェックリスト

透析患者さんの約7割が何らかの「かゆみ」を経験し、このうち約4割の患者さんは強いかゆみに悩まされているといいます。
透析患者さんにかゆみが起こるメカニズムははっきりとは分かっていませんが、皮膚の乾燥や尿毒素(体内に溜まった老廃物)、透析治療の影響など、複数の原因がかかわっていると考えられています。
また、かゆくて皮膚をかいてしまうと、それが原因でかゆみがさらにひどくなる、かゆみで睡眠障害を引き起こすなど、生活の質(QOL)を著しく低下させてしまいます。かゆみは透析の合併症として、軽視せずに、肌を乾燥させないように対策をしたり、保湿のために外用薬を塗ったりするなど適切な治療を行う必要があります。
ここでは、かゆみを感じたらチェックしてほしい事柄をまとめました。かゆみを感じたら我慢せずに、かかりつけの透析施設の医師や医療スタッフに相談しましょう。


No. チェック内容
1

かゆみの度合いをチェックしてみましょう

① かゆみが生じるのはいつですか?
汗をかいたとき、入浴しているとき、夜間に温まったとき、透析中など、決まったときにかゆくなる人もいれば、いつもかゆい、とくにかゆくなるきっかけはないという人もいて、かゆみが生じるタイミングはさまざまです。どんなときにかゆくなるのか意識してみましょう。
② どんなかゆみで、どのくらいの程度ですか? また、どのくらい続きますか?
少しかゆい、痛がゆい、チクチクするかゆみ、違和感を伴うかゆみなど、かゆみにもさまざまな種類があり、また程度や持続時間も人それぞれです。
③ かゆみが生じるのはどの部位ですか?
からだのどの部分がかゆいのか、また、かゆい部分の皮膚は乾燥しているか、湿疹はないか、赤くなる発赤はないか、引っかいた跡が残っているか、などで対処法が変わってきます。 ご自身のかゆみの度合いをチェックして、正しく主治医に伝えましょう。

2

適度な温度や湿度を保ち、室内環境を整えましょう

肌が乾燥するとかゆみの原因になります。適切な室内環境を整えることが大切です。

  • 部屋の中は掃除をして常に清潔にしましょう。
  • 冬場の乾燥は肌の大敵です。加湿器を利用して、適度な湿度を保ち、肌の乾燥を防ぎましょう。洗濯物や濡らしたタオルを室内に干したりするのも乾燥対策のひとつになります。
  • 湿度の高い夏場でも、エアコンの風で空気は乾燥しがちなので注意が必要です。エアコンの風が直接肌に当たらないようにしましょう。

3

肌に優しい衣類を着用しましょう

  • 肌着はチクチクする素材は避け、綿製品など肌に優しいものを選びましょう。ナイロンなどの化学繊維、ウール素材は避けた方が良いでしょう。
  • 冬場は発熱性のある化学繊維の保温インナーを着用する方も多いと思われますが、これがかゆみの原因となることもあります。かゆみを感じるときは、保湿インナーの下にもう一枚、綿などの肌に優しい素材の肌着を重ねると良いでしょう。
  • 新しい肌着は、使う前に一度水洗いしましょう。
  • 洗濯の際には、洗剤は十分にすすぎ落とすようにしましょう。
4

入浴時の工夫で肌の乾燥を防ぎましょう

  • 汗をかいたら、シャワーなどですぐに洗い流し、清潔を心がけましょう。
  • 熱いお湯につかると、かゆみが生じやすくなります。また、肌の保湿に必要な皮脂膜が流されてしまうため、お風呂のお湯はぬるめにして、長湯は避けましょう。
  • 肌はナイロンタオルなどでゴシゴシと強くこすらず、石鹸やボディソープをよく泡立ててから、手のひらや綿製の柔らかい素材のタオルなどでやさしく洗いましょう。
  • 石鹸やボディソープ、シャンプーは、弱酸性で肌に優しいものを選びましょう。保湿効果のあるものを選ぶと良いでしょう。また、石鹸などは肌に残らないように十分に洗い流しましょう。
  • お風呂から上がった後にほてりが生じるような入浴剤の使用は避けましょう。保湿効果のある入浴剤は効果的なこともあります。
  • からだを拭くタオルも、綿製の柔らかい素材のものを選ぶと良いでしょう。からだを拭く際にもゴシゴシとこすらず、タオルを優しく当てて水分を吸い取るようにしましょう。
  • お風呂から上がったら、できるだけ早く保湿剤を塗りましょう。お風呂上がり以外でもこまめに保湿剤を塗るようにすると、肌の乾燥が和らぎます。
5

爪は短く切りましょう

  • かゆみを感じている皮膚をかきこわしてしまうと、かゆみがひどくなるばかりか、生活の質も低下させてしまいます。爪は短く切り、かゆくても、なるべくかかないようにしましょう。
  • とくにシャント部や穿刺部をかかないように気を付けましょう。
6

リンを摂りすぎていないか食生活を見直してみましょう

血液中のリンが増えすぎてしまうと、かゆみの原因となります。食生活と栄養バランスを見直し、お薬が出ている場合は決められたとおりに服用することが大切です。

7

服用しているお薬やサプリメントを見直してみましょう

痛み止めや利尿薬などのお薬や、サプリメント、健康食品の中には、かゆみの原因となるものがあります。かゆみが生じたら、これらのお薬やサプリメントの見直しが必要です。かかりつけの医師・薬剤師に相談しましょう。

8

睡眠を十分に取りましょう

肌の健康を保つためにも、十分な睡眠が必要です。とくに、強いかゆみは日常生活に支障をきたし、夜間のかゆみは睡眠の妨げにもなります。

かゆみの対策をせず放置してしまうと、かゆくてイライラするばかりか、皮膚をかいたことが刺激になって、かゆみがさらにひどくなる…という悪循環にも陥ってしまいます。 かゆみの原因や対策については、「教えて!透析Q&A」も参考にしてみてください。
かゆみには早めに適切な対処を講じることが大切です。かゆみが生じたら、我慢せずに、かかりつけの透析施設の医師や医療スタッフに相談してください。

〔参考文献〕

大森健太郎ほか:透析皮膚搔痒症の実態―新潟県内41施設2474名の調査報告.透析会誌2001; 34(12):1469-1477.

佐藤貴浩ほか:皮膚搔痒症診療ガイドライン2020. 日皮会誌2020; 130(7): 1589-1606. 秋澤忠男著「腎臓病と最新透析療法-より快適な透析ライフを送るために-」、ゆまに書房、2008年