
このコーナーでは、透析患者さんには欠かせない食事管理について、「1から料理を作る」のではなく、
スーパーやコンビニで入手できるものや外食時に活用できる手軽な食事管理のコツをご紹介します。
【執筆】株式会社日立製作所 ひたちなか総合病院 栄養室 腎臓病病態栄養専門管理栄養士 中山 真由美 先生
【監修】茨城キリスト教大学生活科学部食物健康科学科 教授 石川 祐一 先生
季節の変わり目に気をつけたい食事のポイント
夏から秋になると朝晩の暑さも和らぎ、過ごしやすくなってきますね。その一方で、気温差に体がついていけず、「体がだるい」「食欲がない」など、体調を崩すことはないでしょうか?
このような時期に気を付けたいポイントを考えてみましょう!!
日本では、昔から「季節の変わり目は体調を崩しやすい」と言われており、その背景の一つに「気温の変化」が影響していると考えられています。
一日の中で気温の変化が大きかったり、冷暖房の効いた部屋と屋外の気温差が大きかったりすると、体温調節の役割を担う自律神経のバランスが乱れ、免疫力が低下し、体調を崩しやすくなると言われています。
季節の変わり目に「だるい」「食欲がない」と、なってしまわないように
…知っておきたい食事のポイント
「うどんだけ」「ごはんとふりかけだけ」「菓子パンだけ」など、主食のみの食事で済ませていませんか?
このような状況が続いてしまうと、筋肉のもととなる「たんぱく質」や体の調子を整える「ビタミン」が不足し、「だるさ」などの体の不調が改善されにくいだけでなく、免疫力の低下にもつながる可能性があります。免疫力の低下は、加齢やストレスなども原因の一つと言われています。
では、食事ではどのように気をつければ良いのでしょうか?
免疫力を高めるための食事のコツ
(1)腸内環境を整えましょう
免疫細胞の多くは腸内に存在すると言われています。善玉菌を増やし、腸内環境をより良くするような食事を心がけましょう。
<腸内環境を整えて免疫力を高める食材>
・発酵食品や乳酸菌…善玉菌を増やす
例:味噌、納豆、キムチ、ヨーグルト、乳酸菌飲料
※食塩やリン、カリウムの多い食品があります。血液検査で、カリウムやリンなどが目標値を超えている、また、ご自身の透析施設から注意や制限を指示されている食品がありましたら、そちらの指示にしたがいましょう。
※納豆は内服薬の関係で摂取が禁止されている場合がありますので、そのような指示がある方は避けましょう。

・オリゴ糖…善玉菌のエサとなる
例:オリゴ糖シロップ
※食品としては、玉ねぎやごぼう、大豆などに含まれていますが、その他に、特定保健用食品として簡単に摂取しやすいシロップタイプも市販されています。
・食物繊維…腸内環境を整える
例:野菜、海藻、きのこ類など
※カリウムを多く含む食品が多いため、ご自身の透析施設でのアドバイスにしたがって、ゆでこぼしや水さらしを行い、また、摂取量に注意しましょう。
(2)肉や魚などのおかずを食べましょう
たんぱく質の摂取が不足すると、筋肉などの体を構成しているたんぱく質を分解して不足分を補おうとするため、やがては体力や免疫力が低下する可能性があります。主食だけでなく、おかずも一緒に食べるよう心がけましょう。
(3)緑黄色野菜を適度に摂りましょう
緑黄色野菜には、ビタミンAやビタミンCなどが含まれており、体内の粘膜を強化する働きがあります。
※カリウムを多く含む食品ですので、ご自身の透析施設でのアドバイスにしたがって、ゆでこぼしや水さらしを行い、また、摂取量に注意しましょう。
体を温めるような食品も取り入れましょう
気温差などで「体が冷える」と自律神経のバランスが乱れ、体調を崩す原因となる可能性があります。冬が訪れる前に体を冷やさないような食事を心がけましょう。
例:ショウガ、ゴボウ、にんにく、ねぎ
その他、シナモンや唐辛子、カレー粉なども効果が期待できます。
以上の食材を考慮したおすすめの一品をご紹介します。
<豚汁風~汁は控えて具を食べるおかず~>

<ワンポイントメモ>
~お鍋ひとつで手軽に調理~

◇豚肉や油揚げ、ゆでこぼした野菜を油で炒め、 味噌、おろししょうがで味を調えます。 お好みで七味唐辛子を少しかけてピリ辛にどうぞ。
◇お料理を簡単に済ませたい場合は、スーパーで食材を購入するときに、薄切りの豚肉や油揚げはあらかじめカットされたものを、野菜はカット済みのものや冷凍食品を使用すると、包丁を使用せずに調理できます。
◇味付けは、インスタント味噌汁用の味噌を使用しても良いでしょう。
その際、減塩のため、味噌の量はすべて使わず、1人当たり「半分」の量にしましょう。
◇食塩や水分制限を考慮し、汁は飲まないようにしましょう。
ここでは季節の変わり目に多くみられる症状や、食事の面から考える予防対策の一つをお示ししました。体調が優れない理由は、季節の変化だけではありませんので、無理をせずに、早めに、ご自身の透析施設の医師や看護師にご相談ください。
透析生活を快適に過ごしていただくために、
<生活のリズムを整えましょう> 規則正しい生活、3食きちんと食べる、適度な運動
<栄養バランスを考えましょう> 主食、主菜、副菜をそろえた食事
こちらの基本的なポイントもお忘れなく心がけましょう。 また、基本の食事療法については「透析レシピ」内にある「これだけは知っておきたい食事管理のポイント」もご参照ください。
季節の変わり目に体調を崩さないよう、予防対策をして、季節の移り変わりを楽しみましょう!!