
このコーナーでは、透析患者さんには欠かせない食事管理について、「1から料理を作る」のではなく、
スーパーやコンビニで入手できるものや外食時に活用できる手軽な食事管理のコツをご紹介します。
【執筆】株式会社日立製作所 ひたちなか総合病院 栄養室 腎臓病病態栄養専門管理栄養士 中山 真由美 先生
【監修】茨城キリスト教大学生活科学部食物健康科学科 教授 石川 祐一 先生
気軽にできるちょい足しアレンジ
エネルギーアップのための食事のコツ
栄養状態が悪化し、痩せて筋肉が減ってしまうと、疲れやすくなったり、免疫力が低下して他の病気になりやすくなったりします。そのため、痩せや体重減少を予防していくことが大切です。
透析施設で「しっかり食べてくださいね」と言われたことはありませんか?
しかし、なかなか食べる気がしない、食欲がなくていつもより食事が摂れない…という方もいらっしゃるかもしれません。
透析患者さんは、もともと食欲不振になりやすいことや、透析による栄養素の除去や慢性炎症の影響などもあって、エネルギーが不足しがちで低栄養に陥りやすい状況にあります。
さらに味覚が変化したり、胃腸の調子が悪くなったり、加齢に伴って食べ物を噛んだり飲み込んだりする力が低下したりする場合もあり、エネルギー不足の原因になります。
そのため、単にたくさん食べればよいというわけではなく、効率的にエネルギーを摂取する工夫が大切です。
食べないといけないけど、食欲が出ない…そんなときのために知っておきたい、効率的に栄養を摂るための食事のコツを一緒に考えてみましょう。
知っておきたいエネルギーアップのコツ
油脂を活用しましょう
調理法を工夫することで、食事のエネルギー量を簡単に増やすことができます!
油は少量でも高エネルギーなため、効率的にエネルギーアップすることができます。 ゆでる、蒸す、煮るという調理法よりも、揚げる、炒める、焼く方が、エネルギーアップしやすくなります。

「油」と聞くとフライや天ぷらなどの「揚げ物」ばかりをイメージしてしまい、「揚げ物は苦手であまり食べられない…」と思われる方がいるかもしれません。
ここでは、油の使い方次第で無理なくエネルギーアップできる方法を紹介します。
<ワンポイントメモ>
仕上げに油をプラスしよう!
- 食べるときに、オリーブオイルやごま油などの油を、小さじ1杯(4g)程度かけるだけでもエネルギーアップすることができます。
- 一言で油といってもたくさんの種類があります。エゴマやアマニなどお好みの植物油を取り入れるのも良いですが、油の種類によっては1日の目安量が表示されている油もあります。その場合には、その目安に従い、一度にかけ過ぎないよう注意しましょう。
(1)主食編
<トーストにマーガリンまたはバターを塗る>
マーガリンの代わりにジャムでも良いでしょう。
⇒ポーションタイプ(使い切りサイズ)のジャム15g(小さじ2杯程度)を塗ると約30kcalアップします。
<ごはんを、チャーハンやピラフにする>
<ワンポイントメモ>
- チャーハンやピラフを食べるときは、塩分に注意して、一緒に食べるおかずは塩分の少ないものにしましょう。
- 次のような工夫でも簡単にエネルギーアップを図れます!
- ①うどんやそうめんなどの麺類に油をかけたり、天かすをのせたりして食べる
- ②食パンをクロワッサンにする
(2)おかず編
<お浸しを炒め物にする>
<ワンポイントメモ>
- このような工夫でも簡単にエネルギーアップを図れます!
- ①酢の物を、マヨネーズを使ったサラダにする
- ②ノンオイルドレッシングをオイル入りドレッシングに、カロリーを抑えたマヨネーズを通常のマヨネーズにする
オイル入りドレッシングには油が使用され、通常のマヨネーズは低カロリーのものよりも油が使われているため、効率よくエネルギーアップできます。
例えば、通常のマヨネーズ大さじ1杯(約14g)程度を使うと約100kcalアップします。
< 冷ややっこを、厚揚げ(生揚げ)にして、さらに油を使って焼く>
<ワンポイントメモ>
- このような工夫でも簡単にエネルギーアップを図れます!
- ⇒しゃぶしゃぶを、唐揚げやトンカツにする
- 油っぽくて食べづらい…という方には
- ⇒酸味や香りをプラスすると食べやすくなる場合もあります。
お好みの食材や味付けは積極的に取り入れて、食べやすくなるように工夫してみましょう。 - ①お酢やレモンの酸味をプラスして、さっぱりした口当たりにする
- ②バジルや大葉、しょうがやみょうがなどの香りのあるものをプラスする
- ⇒酸味や香りをプラスすると食べやすくなる場合もあります。
注)主治医から脂質制限の指示を受けている患者さんは、油を使う前に透析施設の医師や看護師、管理栄養士にご相談ください。
主食は抜かないようにしましょう
「体重が増え過ぎるから、ごはんを抜いている(または、普段の半分にしている)」という方はいませんか?
主食の主な栄養素である炭水化物は、1日のエネルギーの半分以上を占めています※。
主食を抜いたり半分に減らしたりすると、エネルギー不足になる可能性があります。
体重の増加は、水分や塩分の影響もあります。詳しくは「体重管理のコツ」をご参照ください。
主食があまり食べられない方は、はるさめやくずきりなどのでんぷん製品を活用すると良いでしょう。(例:炒め物、ドレッシングやマヨネーズを使ったサラダなど)
食事は抜かないようにしましょう
食事を抜くとエネルギー不足を招きますので、毎日きちんと三食を心がけましょう。
また、「お茶漬け」「かけうどん」など主食だけでおかずのない食事にならないようにしましょう。
詳細は「気軽にできるちょい足しアレンジ~筋力を維持する食事のコツ~」をご参照ください。
栄養補助食品を活用するという方法も
食事でエネルギーを摂ることがなかなかできないときには、間食(おやつ)を取り入れるのも良いでしょう。
また、少量でも高エネルギーな栄養補助食品を活用する方法もあります。
栄養補助食品には飲料タイプやゼリータイプのものがありますので、お好みのものを試してみると良いでしょう。
ドラッグストアや通信販売などインターネットで購入することもできます。使用する際には、事前に、透析施設の医師や看護師、管理栄養士にご相談ください。
キッセイ薬品が提供する栄養補助食品のページ もご参照ください。
食欲がなく食事量が普段の半分以下の日が続いている、いろいろと工夫しているけどやっぱり食べられない…などの場合は、透析施設の医師や看護師、管理栄養士にご相談ください。
食べる量だけでなく、調理の工夫などの「質」にも注目しながら、元気に快適な透析生活を送っていきましょう。